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技術コラム

アクチュエータとは、入力されたエネルギーもしくはコンピュータが出力した電気信号を物理的運動に変換する機械・電気回路を構成する機械要素のことです。能動的に作動または駆動するものを言います。

松定プレシジョンには、ピエゾ(圧電素子)の特性(印加電圧を変えることにより、ナノメートル領域の極めて微小な伸張の変化を起こす)を応用したピエゾアクチュエータという製品がございます。

ピエゾとは?

圧電体とは、その結晶に力あるいは歪みを加えることにより、電荷を発生する正圧電効果と、逆に電界を加えると力や歪みが発生する逆圧電効果を持つ物質をいいます。
この物質の逆圧電効果を利用するのがピエゾ素子です。
素材としてはチタン酸・ジルコン酸・鉛(Pb〔Zr,Ti〕O3)等が用いられます。

ピエゾを用いたマイクロステージをピエゾドライバで駆動させている図です。

ピエゾの特徴

無限の分解能

ピエゾ素子の長さの変化は印加電圧を変えることにより、ナノメートル領域の極めて微小な伸張の変化として現れます。印加電圧のわずかな変化は滑らかな動きに変換され、この連続的な動きを妨げるような電圧のしきい値等はありません。従って分解能は、印加電圧の分解能(精度)で決まります。
ピエゾアクチュエータには、歯車など機械的運動をする機構がついていません。その伸びは単に固体物性の歪に基づいており、基本的に磨耗・劣化はありません。耐久試験の結果、数百万回の伸縮の後でもなんら変化は観測されませんでした。

大きな耐荷重

ミクロン・サブミクロン精度で位置決めする場合、ピエゾアクチュエーターは最適です。5トンの荷重に耐え、数百ミクロンの領域なら超高精度で位置決めが可能です。

早い応答性

多くの場合、位置決め運動の速さは大変重要な意味を持ちます。ピエゾアクチュエーターは、アクチュエーターの中で最も速い応答性を持つ位置決め素子です。
その伸張速度は、セラミック材料中の音速に依存し、重量加速度の数千倍の加速度が得られます。

ピエゾの一般特性

ヒステリシス現象(hysteresis)

ピエゾアクチュエータの最大の欠点は、ヒステリシスがあることです。つまり、ピエゾアクチュエータの伸びは電界の強さに厳密には比例しません。電圧/ストロークの軌跡は、非線形的な曲線”ヒステリシス曲線”として表されます。電圧をかけた場合、素子の伸びる度合いは電圧の大きさに依存します。ヒステリシス曲線の最大幅は、最大ストロークの15%にまで達します。これを補うためには、外部に高精度の位置検出機構(ストレインゲージ等)を設ける必要があります。

ピエゾのヒステリアスです。

クリーピング現象(Creep)

ピエゾアクチュエータの印加電圧を新たな値に設定すると、一旦ある値に落ち着いた後、緩やかな伸びが観測されます。この余分な伸びはヒステリシスと密接な関係があり、セラミックスの分極が続いていることにより生じます。この現象をクリーピング現象と呼びます。クリーピング現象はとても小さく、指数関数的に減少します。

ピエゾのクリーピングです。

取り扱い注意事項

ピエゾアクチュエータは、構造的に丈夫な設計をしています。
しかしながら素材がセラミックでできているため非常にもろく、取り付けには注意してください。

  1. 積層型ピエゾアクチュエータは、軸方向にのみ応力を加えることができます。
    偏った力や剪断(せんだん)応力、張力が加わらないよう配慮が必要です。
  2. 先端にタップがあるモデルは、ピエゾ本体に回転モーメントがかからないよう配慮が必要です。
    積層型ピエゾアクチュエータは、何枚もの層でできています。この層が剥がれる恐れがあります。
  3. 2つの向い合った平行平面の間に取り付ける場合、アクチュエータが各々の面にたいして垂直になるように設置してください。
    2つの面が平行でない場合は、アクチュエータの一端にボールが付いたオプションを使用して下さい。
  4. 予備荷重の機能を持ったアクチュエータなら、張力・取り付け状態に僅かな狂いにも対応します。
ピエゾアクチュエータの構造と動作イメージです。