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技術コラム

 

強誘電体は高性能なセラミックコンデンサに使われる材料としても注目されています。強誘電体の概要や分類、用途について解説します。

強誘電体とは

強誘電体(Ferroelectrics)は絶縁体、つまり誘電体の一種です。誘電体には次の4種類があります。

  • 常誘電体(Paraelectrics)
  • 圧電体(Piezoelectrics)
  • 焦電体(Pyroelectrics)
  • 強誘電体(Ferroelectrics)

この4種類は、それぞれが別々の性質を持つわけではありません。強誘電体は焦電体の一種であり、焦電体は圧電体の一種、さらに圧電体は常誘電体の一種です。この関係を図にすると下のようになります。

誘電体の種類|松定プレシジョン
誘電体の種類

誘電体に電圧を加えると電気は流れず、プラスの電気を帯びた部分とマイナスの電気を帯びた部分に分かれます。これを分極といいます。常誘電体では、電圧をゼロにすると分極はなくなります。一方で強誘電体は、電圧をゼロにしても分極したままの状態を保ちます。

圧電体は、圧力を加えて変形させると分極する物質です。逆に電圧をかけると変形する性質を持っています。また焦電体は温度変化によって電気的ポテンシャルが生じる物質です。

通常は、空気中の荷電粒子を表面に吸着させて電荷を中和していますが、加熱することで表面の価電子粒子との電荷のバランスが崩れ、分極します。焦電体も強誘電体と同様に電圧が加えられていない状態でも自発的に分極していますが、分極の方向を変えることはできません。

強誘電体は圧電体や焦電体の性質も併せ持っているのも特徴です。そのため強誘電体は、電気や応力に対しても電気的な応答を示します。さらに原子の構成によっては、磁気に対して応答するものもあります。

強誘電体と似たような振る舞いを示すものに強磁性体(Ferromagnet)があります。強磁性体は磁場を加えない状態でも磁区を形成しています。強誘電体の接頭語にFerroが用いられているのは、この強磁性体に由来するものです。

強磁性体はかつて、酒石酸カリウムナトリウム(ロッシェル塩)が一般的でした。しかし近年では、リン酸二水素カリウム(KDP)やチタン酸バリウム(BaTiO3)が代表的な強誘電体として用いられています。

強誘電体の分類

強誘電体は相転移の違いから、「変位型」と「秩序-無秩序型」の2つに分類されます。

• 変位型

変位型の強誘電体は、高温では常誘電体と同様に自然分極を発生しません。なぜなら高温においては自発的に整列する永久双極子を持たないからです。

しかし、キュリー温度とも呼ばれる相転移温度(Tc)以下の温度では、結晶が少し縦長になり正負のイオンが相対的に変位するため、自発分極が発生します。チタン酸バリウム (BaTiO3) をはじめ、強誘電体の多くは変位型強誘電体に分類されています。

• 秩序‐無秩序型

高温では電気双極子がランダムに配置し、温度の低下とともに整列するのが秩序‐無秩序型です。双極子の向きが整列して自発分極が生じると強誘電体になります。

秩序‐無秩序型の強誘電体は、高温では電気双極子が熱エネルギーによってランダムに配向するため、物体として大きな目で見ると分極は0になります。亜硝酸ナトリウム(NaNO2)などが秩序‐無秩序型として代表的な物質です。

強誘電体の特徴

強誘電体の特徴は、電圧が加えられていない状態でも自発的に分極していることです。さらに、極の向きと反対方向に電圧を印加することにより分極の方向を反転することができるのも特徴です。

強誘電体の分極は、材料結晶の格子がひずむことによる電気的なバランスの崩れにより発生します。加えられた電圧により、下図のようにひずみの向きが変わるため、分極の方向も変わるからです。

また、強誘電体は電場・分極曲線において、強磁性体と同様のヒステリシスループを示すのも特徴です。

強誘電体の用途

強誘電体は誘電体としてセラミックコンデンサやPTCサーミスタなどに使用されています。また、前述のように圧電素子の一種でもあり、圧電効果も持つため、点火装置やピエゾアクチュエータとしても利用されています。

強誘電体ならではの特徴を活かした利用方法の一つが、不揮発性のメモリ材料として使うことです。そのため強誘電体メモリやFFRAM( Ferroelectric Floating Gate Random Access Memory)などにも活用されています。

参考資料