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技術コラム

 

クリーンブースは、半導体や精密機器、光学部品、医薬品や航空宇宙などの分野で開発から製造、検査、梱包などの工程で使われています。クリーンブースの解説では、クリーンブースの特徴や種類、構成要素、機能、性能、用途、導入、メリット、疑問について解説します。

クリーンブースとは?

クリーンブースとは、室内に設置する局所的にクリーンな空気環境を実現する囲われたエリアのことです。簡易クリーンルームなどとも呼ばれクリーンルームの代わりやクリーンルーム内に設置しさらにクリーン度を上げるために使われています。海外では、ソフトウォールクリーンルーム(Softwall cleanroom)やクリーンテント(cleantent)、ポータブルクリーンルーム(portable cleanroom)などとも呼ばれています。

クリーン化の広がりは、製品の歩留まりを改善し、品質の向上を図るための対策として必要なものになっています。また安心感や信頼感を得るためのツールとしてのニーズもありクリーンブースが用いられる場合もあります。

クリーンブースは通常、スチールまたはアルミニウムのフレームをビニールシートで囲い、天井にファンフィルターユニット(FFU)と呼ばれるHEPAフィルターを備えた空気清浄ユニットが搭載されています。フレームは、クリーンブースの形状や規模に応じて長さを変えたりつなぎ合わせたりできるので、柔軟かつ迅速に組み立てることができます。

松定プレシジョンのクリーンブースの標準サイズは、1x1.5mから最大5x5mの範囲です。ニーズに応じて15種類の標準サイズからお選びいただけます。クリーンブースは、その柔軟性から標準サイズだけでなく、設置場所に合わせてフィットする独自のサイズでの提供が可能です。

クリーンブースを使用する理由

クリーンブースは、一般的なクリーンルームよりも安価で、短期間に設置できます。また、設置に許可は必要ありません。また、あらかじめ加工された部材を組み立てるので騒音やホコリはほとんど発生しません。また、組み立てや設置は、数人で出来ます。

クリーンブースの種類

クリーンブースには、サイズの違いだけでなく、構造や形状、素材、用途によっていろいろな種類があります。また、クリーンブースは、低コストで柔軟性があり、軽量で組み立ても簡単なことによる導入のしやすさから人気があります。クリーンブースは、固定された壁のクリーンルームよりもはるかに柔軟で、あらゆるスペースに合わせて調整し導入できます。

松定プレシジョンでは、下記の種類のクリーンブースを製造販売しています。

フィルム式クリーンブース

フィルム式クリーンブース

フィルム式のクリーンブースは、最も一般的なクリーンブースで、側面を帯電防止フィルムで囲ったクリーンブースです。

パネル式クリーンブース

パネル式クリーンブース

パネル式クリーンブースは側面がパネルで構成されたクリーンブースで、クリーンルームと同じような外観です。

エアシャワー付クリーンブース

エアシャワー付クリーンブース

エアシャワー付きクリーンブースは、入口にエアシャワーを設けたクリーンブースで、入室に伴う空気の汚れを防ぎます。

簡易クリーンブース

簡易クリーンブース

簡易クリーンブースは、コストを抑えた小型で簡易構造のクリーンブースです。

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パネル式 暗室クリーンブース

パネル式暗室クリーンブースは、側面に黒色のパネルを使ったクリーンブースです。

フィルム式 暗室クリーンブース

フィルム式 暗室クリーンブース

フィルム式暗室クリーンブースは、側面に黒色の帯電防止ビニールを使ったクリーンブースです。

イエロークリーンブース

イエロークリーンブース

イエロークリーンブースは、側面に紫外線の透過を抑えた黄色の透明ビニールを使ったクリーンブースです。半導体の工程などで使われます。

卓上クリーンブース

卓上クリーンブース

卓上クリーンブースは、机の上に設置できるクリーンブースで、既存の机をクリーンベンチにすることが出来ます。局所的なクリーン環境が必要な場合や、クリーンルームやクリーンブース内でさらにクリーン度を上げる場合に使用します。

陰圧ブース(排気ブース)

陰圧ブース(排気ブース)

陰圧ブースとは、外部よりも気圧が低い状態のブースです。薬品や樹脂などガスや臭気が発生する工程の拡散防止に使われます。

大型クリーンブース

大型クリーンブース

大型クリーンブースは、5mx5mなどの大型のクリーンブースです。ブースを連結することでさらに大型のクリーンブースも実現することが出来ます。

特注クリーンブース

特注クリーンブース

特注クリーンブースは、クリーン度、サイズ、形状、各種オプション類でお客様に合わせた最適なクリーンブースを提供します。

クリーンブースの機能や構成要素

クリーンブースは、あらゆるサイズに対応し、移動や移設が可能で、限られたスペースに収まる特徴があるため、さまざまな用途に使用できます。不要なときは分解できますし、必要に応じて再組み立てできます。クリーンブースの実用性と適応性は、清浄な空気を必要とする中小規模から大規模な製造業にまで必要とされています。

ほとんどのクリーンブースには、フィルタからの空気が流出できるように、床から7センチ程度の隙間が設けられています。四方の 面すべてに床との隙間の無いクリーンブースもあります。その場合、空気の排出口となるダンパーを設ける必要があります。これは、FFUが停止中でも外部から汚れた空気の流入を防ぎます。

また、クリーンルームを設計する際には考慮すべき要素がいくつかあります。これには国際標準化機構 (ISO) の分類も含まれます。たとえば、ISO 8 クリーンルームにはエアシャワー(エアロック)を通過せずに入ることができますが、ISO 5 クリーンルームにはエアシャワーを1か所か2か所設ける必要があります。

エアフロー

垂直気流エアフロー

垂直気流エアフローとは クリーンブースの天井にファンフィルターユニット(FFU)を備えた最も一般的なタイプのクリーンブースの方式です。FFUは、周囲の環境から空気を引き込み、HEPA フィルターを通って作業スペースに清浄な空気を供給します。側面と床の隙間から排気します。エアフローには、乱流式と層流式があります。詳しくは、FAQをご覧ください。

垂直気流エアフロー

水平気流エアフロー

水平気流エアフロ―とは、クリーンブースの側面にファンフィルターユニット(FFU)を備えたクリーンブースです。FFUの背面から引き込まれた周囲の空気は、HEPA フィルターを通過して、クリーンブース内に水平気流の清浄な空気として供給されます。水平設計により、ワークスペースがろ過された空気の流れに近くなります。特定の用途に対して環境条件を改善します。

水平気流エアフロー

水平エアフロークリーンブースは、ライフサイエンス、医療機器メーカー、製薬会社、電子機器メーカーで使用されています。

クリーンブースの方式

自立式クリーンブース

自立式クリーンブースとは、柱で自立している構造の一般的なクリーンブースのことです。次の天井吊り下げ式クリーンブースとの対比の為に自立式クリーンブースと呼んでいます。

自立式クリーンブース

天井吊り下げ式クリーンブース

天井吊り下げ式クリーンブースは、天井からクリーンブースの天井グリッドを吊り下げた形状のクリーンブースです。柱が必要なくコストを抑えられますが、天井の工事や設置の制限などであまり一般的ではありません。

クリーンブースの天井グリッドは、建物の天井の根太から吊り下げられます。クリーンブースの側面にはフレームがなく、天井グリッドから帯電防止ビニールが吊り下げられています。また、側面がカーテンの場合は、カーテンの上部にあるフックを使用して天井グリッドの端から吊り下げられカーテンレールも用いればスライドさせることもできます。

クリーンルームフレームの種類

クリーンブース用のフレームには、アルミニウムとスチールの2種類があります。どちらの金属も管状に成形されており、アルミニウムは、押し出し成形によって作られています。スチールのフレームは粉体塗装が施されています。フレームによって、柱や梁、天井グリッドを形成し、ファンフィルタユニットや側面のビニールシート、照明器具を支えています。多くの場合、フレームの寸法はお客様のニーズによって決定され加工されます。

アルミフレーム
アルミフレーム

アルミニウムフレーム

アルミニウムフレームは、アルミニウム合金の押出材にアルマイト処理したものです。クリーンブース用のアルミニウムプロファイルは、角型で側面にT溝があります。アルミフレームの最大の利点は軽量であるため、分解や移動が簡単であることです。また、アルミニウムプロファイルのフレームは、専用の連結金具で簡単に接続できます。その為、クリーンブースを簡単に拡張したり、再利用したりすることができます。

スチール(鉄骨)フレーム

スチールフレームは、成形、溶接、粉体塗装された鋼管で作られています。強度を高めるために、フレームはしっかりとボルトで固定されています。鉄骨フレームは重くて移動が困難ですが、アルミニウムフレームよりも安価です。

簡単な拡張

クリーンブースの便利な点の1つは、ニーズに合わせて作業スペースを拡張および縮小できることです。クリーンルームには無いこのクリーンブースの利点により、クリーンブースの追加や拡張や縮小などの改造が行われています。

クリーンブースの天井

クリーンブースの天井は、上部にファンフィルターユニット(FFU)を搭載するためグリッド状になっています。ほとんどの天井グリッドは支柱フレームで支えられていますが、一部には天井から吊り下げるタイプのクリーンブースもあります。天井の大きさやFFUの設置数、重量に応じて支柱フレームの本数が決まります。また、支柱フレームを多く出来ない場合は、天井にトラス構造の梁を入れ強度を上げます。一般的なクリーンブースの天井は、人が乗ることは出来ませんが、メンテナンス用に点検口を設けることがあります。

天井のFFUによる吸気口以外の部分は、樹脂や金属などの板や複合板、シートで空気の流れを遮っています。

クリーンブースの天井(天井パネル)
天井パネル

クリーンブースの天井の高さは 2.1から3.5メートルで、カスタマイズも可能です。ファンフィルターユニットと施設の天井の間には最小100mmの隙間が必要で、フィルター ユニットの高さは160から215mmです。

クリーンブースの壁

クリーンブースの壁は、一般的にクリーンブース用の透明な静電気防止のビニールが用いられます。ビニールの壁は、軽量で取り付けや掃除も簡単です。アルミフレームを用いたクリーンブースでは、アルミフレームとアルミフラットバーでビニールを挟み、ナットやビスで固定します。上部のみを固定しカーテンの様にする場合と、両端と底面もアルミフレームに固定する場合があります。透明ビニールだけでなく、遮光性のある黒いビニールを用いれば、クリーン暗室になりますし、紫外線を透過しにくいUV対応帯電防止ビニールを用いれば、半導体のプロセスで必要なイエローブースになります。0.3mmなどの厚めのビニールが用いられているので簡単に破れることはありません。ビニールを用いた壁面以外にも、透明の樹脂パネルや複合板を用いたパネル式のクリーンブースもあります。

クリーンブースの壁(例:暗室用ブラックパネル)
暗室用ブラックパネル

クリーンブースの壁は、使用条件、用途、作業に合わせて素材を選択できます。

クリーンブース用樹脂フィルムの種類

クリーンブース用樹脂フィルムにはさまざまな選択肢があり、ポリ塩化ビニル (PVC)やビニール、ポリプロピレンが最も一般的に使われています。軟質プラスチック壁の目的は、クリーンルーム環境を汚染物質の侵入から隔離することです。使用条件に合わせて簡単に付替えできます。

透明軟質塩化ビニル(PVC)

透明な帯電防止タイプの軟質塩化ビニルは、クリーンブースに最も一般的に使われている材料です。厚さも0.1mmから3mmまでの種類があり用途に合わせて幅広いラインナップから選択できます。PVC の特性により、掃除が簡単で、汚染のない状態を保つことができます。

導電性塗膜付きPVCフィルム

導電性塗膜付きPVCフィルムは、透明のPVCフィルムに、導電性の模様が印刷され帯電性能の優れたフィルムです。導電性塗膜は、アルコールなどの溶剤で剥がれるので取扱には注意が必要です。

イエローフィルム

イエローフィルムは、紫外線の透過を抑えた黄色い透明の帯電防止フィルムです。クリーンルーム内での半導体露光工程用クリーンブースなどで使われ、イエローブースなどとも呼ばれています。

イエローフィルム

暗室用フィルム

暗室用フィルムは、遮光性のある黒色の軟質塩化ビニールフィルムです。暗室として使用する場合は、隙間から光が入らないように排気や出入り口に工夫が必要です。

他にも、表面にフッ素フィルムを貼り耐薬品性能のあるフィルムや、ガラス繊維を使用した不燃性のあるフィルム、表面をすりガラス状にしてクリーンブースの中が見えないようにするフィルム、溶接などで発生する強烈なアーク光など低減するフィルム、防虫効果のあるオレンジ色のフィルムなどもあります。

クリーンブースの入口

クリーンブースには、以下のさまざまなタイプの入口があり、必要とするクリーン度や使用頻度によってサイズや形式が決められます。また、人の出入口とは別に設備や荷物の搬入・搬出用にパスボックスや開口部を設ける場合もあります。入口のスタイルは、部屋に侵入する汚染物質の数に影響するため、クリーンブースの分類に大きな影響を与えます。このため、汚染物質の数を制限するために、高規格のクリーンブースやクリーンルームには二重ドアのパススルーやエアシャワー、更衣室などが設けられています。

オーバーラップタイプ

オーバーラップタイプの入口は、クリーンブースで最も安価で一般的に使われている入口です。クリーンブースの上部にビニールカーテンを重ねて吊り下げ、オーバーラップした部分から出入りします。

カーテンレールタイプ

カーテンレールタイプの入口は、ビニールカーテンがカーテンレールに吊り下げてある入口です。カーテンレールをオーバーラップさせたりマグネットで密着して外部の空気の侵入を防ぎます。

ドアタイプ

ドアタイプの入り口は、ヒンジの付いたドアの入り口です。クリーンブースは、陽圧のブースなので、入るときに手前に引いて入る方向に設置されます。

ドアタイプ

パスボックス

パスボックスは、クリーンブースやクリーンルームに部材を搬入するために用いられる二重ドア構造の受け渡し箱です。簡易的な構造のパスボックスから高規格のクリーン環境を実現するパスボックスまでサイズや構造など各種のパスボックスがあります。

エアシャワータイプ

エアシャワータイプの入り口は、高規格のクリーンブースやクリーンルームに用いられる入口です。一般的なエアシャワーは、二重ドアになっていて同時に開くことが出来ないエアロック構造になっています。入口から入って扉を閉めると、側面からクリーンな空気が噴射され体に付いた汚れを吹き飛ばします。反対の面から汚れた空気を排出し、エアシャワー室の空気清浄度を上げます。エアシャワーが停止してからクリーンブースやクリーンルームに入ります。

エアシャワータイプ

これらのプロセスにより汚染物質のクリーンブースへの侵入を防ぎます。クリーンブースでは、簡易エアシャワーを用いる場合もあります。これは、入口がドアではなくカーテン形状になっていてエアロック機能はありません。

ファンフィルターユニット(Fan Filter Unit:FFU)

ファンフィルターユニット(FFU)は、クリーンブースで一番重要な部分で、空気をフィルターでろ過し、清浄な空気をクリーンブースに供給します。FFUの性能は、単位時間あたりに処理できる空気の量のほかに、フィルターやモーター、電源、素材の種類や、構造、差圧計などです。クリーンブースのFFUには、通常HEPAフィルターが用いられ、他にもULPAフィルタなども使われます。モーターはACとDCがあり、ACモーターを採用したFFUは安価ですが、電気の消費量が大きく電圧が限定され、周波数により処理できる風量が変わります。一方、DCモーターは、消費電力が少なく入力電圧は、100-240VACと電源環境に依存せず使用できます。また、風量調整機能もあり必要に応じて調整して使うことが出来ます。

ファンフィルターユニット(Fan Filter Unit:FFU)

クリーン度に関するISOやJISの規格では、時間当たりの空気交換量(換気回数、ACH)によって分類されています。例えばクリーンブースの体積が2x2x2m=8m3で、FFUが10m3/minであれば、10x60/8=75回/時間となります。この空気交換率が高いほどISOの分類(クラス)は高くなります。

HEPAフィルター

HEPAフィルターは、クリーンルームやクリーンブースで業界標準のエアフィルターです。HEPAは、high-efficiency particulate air(高効率微粒子空気)の略で、このフィルターでろ過された空気では、ほこり、花粉、動物のふけ、細菌、さまざまな形態の汚染物質を含む、0.3ミクロンの粒子状物質が99.97%除去されます。ランダムに配置された直径1~10マイクロメートルのガラス繊維ろ紙が蛇腹状に折りたたまれて作られています。 HEPA フィルターの効率は繊維の直径と厚さによって決まります。HEPA フィルターの密度により、空気を通過させるための強力な空気循環システムが必要になります。

空調システム

一般的に、クリーンブース内の空調は、部屋の空調に依存します。クリーンブース内を異なる温度や湿度で管理する場合は、専用の空調ユニットを用意する必要があります。

クリーンブース内の照明

クリーンブースの天井は、FFUやパネルなどで覆われ、部屋の照明はクリーンブースの中に届きません。その為、ブースの天井に照明を設置するのが一般的です。照明は、天井のグリッドや天板に固定され、FFUの空気の流れの妨げや乱流のもとにならないように配置されます。その為、クリーンブース内での作業をあらかじめ想定し、FFUと照明の配置を決定する必要があります。
また、暗室やイエロールームの場合は、用途に適した照明を設置します。以前は蛍光灯の照明が用いられていましたが、最近は薄型で発熱の少ないLED照明に置き換わっています。

高気密LED照明ユニット(クラス100対応)
高気密LED照明ユニット(クラス100対応)

クリーンブースの脚部

クリーンブースの脚部には、アジャスタボルトやアンカー用のブラケット、キャスターが用いられます。
キャスターを用いることにより、クリーンブースの運用に柔軟性が生まれます。この構成により、クリーンルームを必要な場所に移動することが可能になります。クリーンブースのキャスターは、フレームの重量を支えることができるように頑丈で、自動ロック機能があります。

クリーンブースの脚部(ナイロンキャスタ)
ナイロンキャスタ
クリーンブースの脚部(アジャスタボルト)
アジャスタボルト

更衣室

更衣室(ガウンルーム)は通常、クリーンルームやクリーン度の高いクリーンブースに併設されています。クリーンブースやクリーンルームで作業する場合は、低発塵のクリーン服など専用の衣類を着用する必要があります。

クリーンブースの性能

ISOのクリーンレベルについて解説

クリーンブースが満たさなければならない最も重要な基準は、ISOやJISの清浄度クラスによる分類要件です。クリーンブースでは、クリーンルームに見られるような密閉性を実現できないため、最高の清浄度クラスを満たすことはできません。しかし、クリーンブースは多くの産業用途で必要とされるクリーン度を満たすクリーン環境を実現できます。

クリーンブースの清浄度クラス

クリーンルームは、室内の空気の清浄度に応じて分類されます。分類は、空気 1 立方メートル中の粒子状物質の量とサイズに基づいています。クリーンルームの分類には、国際標準化機構 (ISO)と日本産業規格(JIS)、米国連邦規格 209E (FS 209E) という 3つのシステムが使用されます。ISOの清浄度分類とJISの清浄度分類は同じ内容になっています。どの分類形式も、クリーンルームの清浄度を指定するために製造業者によって広く使用されています。

ISOやJISの清浄度分類はクラスと呼ばれ、クラス1からクラス9まであり、FS 209E規格ではクラス 100,000 からクラス 1 まであります。さらに業界固有の規格や、EU GMPやUSPなどの国際規格もあります。

クリーンブースの性質上、クラス5 または FS 209E クラス 100 未満の分類に達することは不可能です。ただし、ほとんどの業界では、これらの分類で目的には十分です。半導体の一部の工程などでは、機密性が高く、高い空気清浄度を必要とするクリーンルームによる高いクラスが使われています。

ISOクラス5またはFEDクラス100

ISOクラス5の清浄度基準に達するには、ISOクラス8の前室を使用し、続いてISOクラス7、ISOクラス6を使用してから、ISOクラス5クリーンルームに入る必要があります。ISOクラス5の厳しい要件を満たすクリーンブースを実現するには、ISOクラス5のクリーンブースの周囲に別のクラスのクリーンブースを2つまたは3つ追加する必要があります。

ISOクラス5のクリーンブースではエアフローに関する特定の基準があり、これがその分類を達成するための主要な要素です。標準では、天井グリッドに配置されたFFUからの空気の流れが一方向である必要があります。このタイプの気流では、より多くの空気の消費が必要になります。部屋のサイズが8メートル未満の場合は、水平方向の空気の流れが許可されます。フィルターと空気処理ユニットの数により、必要な空気の流れがはるかに高価になります。
ISOクラス5のクリーンブースの空気交換率は、1時間あたり240~360回です。
IOSクラス5のクリーンブースは、一方向エアフローである必要があります。

ISOクラス6またはFEDクラス1000

クリーンブースがISOクラス6の分類に達するには、入る前に1つ、または2つのエアシャワー(エアロック、パススルー、パスルーム)が必要です。エアロックの数は、部屋のサイズ、プロセスの種類、部屋にいる人の数によって異なります。一方向の空気の流れが推奨されますが、部屋の幅が 4 ~ 6 メートル未満の場合は必要ありません。
ISOクラス6のクリーンブースの空気交換率は、1時間あたり90~180回です。

ISOクラス7またはFEDクラス10,000

ISOクラス7はクリーンブースの最も一般的なクラスです。これらは、精密機器や電子機器、電子部品、医療、製薬、食品産業などのさまざまな業界で広く使用されています。
ISOクラス7のクリーンブースの空気交換率は、1時間あたり30~60回です。
サイズ 0.5 μm の粒子が 1 立方メートルあたり 352,000 個あります。

ISOクラス8またはFEDクラス100,000

ISOクラス8のクリーンブースでは、作業スペースに入る前にエアシャワーやパスルームに入る必要はありません。一部の ISOクラス8クリーンブースには、用途や完了する作業の種類に応じて更衣室が備えられている場合があります。
ISOクラス8のクリーンブースの空気交換率は、1時間あたり15~25回です。
ISOクラス8のクリーンルームは簡易的なクリーン環境を必要とする特定の医薬品製造、医療機器製造、自動車産業など幅広く活用されています。

以下の表は、クリーンルームの ISO規格と、それに相当する FS 209E 規格を示しています。

ISO クリーンルーム規格および FS 209E 相当品
ISOクラス 最大粒子数/m3 粒子/ft3 FS209E相当
≧0.1μm ≧0.2μm ≧0.3μm ≧0.5μm ≧1μm ≧5μm ≧0.5μm  
ISO5 100,000 23,700 10,200 3,520 832 29 100 クラス100
ISO6 1,000,000 237,000 102,000 35,200 8,320 293 1000 クラス1,000
ISO7       352,000 83,200 2,930 10,000 クラス10,000
ISO8       3,520,000 832,000 29,300 100,000 クラス100,000
ISO9       35,200,000 8,320,000 293,000    

クリーンルームやクリーンブースの規格では、空気の洗浄度だけでなく時間当たりの空気交換量(換気回数、ACH)も規定されています。これは部屋の体積とFFUの風量から計算することが出来ます。FFUの時間当たりの風量/部屋の体積=換気回数

クリーンブースの用途

クリーンブースは、半導体や精密機器、電子部品、光学部品、航空宇宙、バイオ、医療、製薬、食品など幅広い分野で開発から製造、検査、梱包などで使われます。

半導体産業での用途

半導体業界では、半導体の後工程やテストのためにクリーンブースが使われます。また、前工程のクリーンルーム内にクリーンブースを設置する場合もあります。半導体製の造製造工程では、紫外線による露光や検査が行われています。このエリアには、外部からの紫外線を防ぐ黄色い透明なビニールカーテンで囲ったイエロークリーンブースが使われています。
また、半導体産業では、半導体の製造だけでなく、半導体製造装置の組み立てやクリーンルームへの搬入、搬出、メンテナンスなどにもクリーンブースが活用されています。
多くのプロセスでは、ISOクラス5 ~ ISOクラス7 に分類されたクリーンブースが必要です。

半導体産業でのクリーンブースの用途
クリーンブースの特徴を活かした用途例
  1. 製品またはプロセスの開発の初期段階で、クリーンルームに移行する前に安価なクリーンブースを使用
  2. 短期間にクリーンな環境が必要な場合
  3. 望遠鏡の光学系の修理や更新など、クリーンな環境を設置場所に構築する必要がある場合
  4. クリーンルーム内の設備を別のクリーンルームに移設する場合
  5. 射出成形機など、生産エリアの特定の設備をカバーする場合
  6. クリーンルームのメンテナンスなどで設備を一時的に保護する場合
  7. 既存のクリーンルーム内のエリアや設備周辺のクリーン度をアップグレードする場合

クリーンブースを使用する業界

クリーンルームの代わりにクリーンブースを使用している業界がいくつかあります。クリーンブースは、柔軟な運用が可能で用途に合わせたカスタマイズなどが簡単に行えます。また、クリーンブースは、コストが低く、既存のスペースを活用できるため、多くの業界で採用されています。医薬品から航空宇宙まで、クリーンブースは、重要な部品や装置の組み立て、検査などに不可欠です。
多くの場合、クリーンルームを使用する用途は、クリーンブースで対応できます。

その他の用途
  • プラスチック射出成型
  • 医療機器の押出成形
  • 医療機器の組み立て
  • 光学およびレーザーの製造
  • マイクロエレクトロニクス
  • 航空宇宙
  • 自動車
  • 食品およびサプリメントの包装
  • 単科大学と総合大学
  • 研究施設
  • 滅菌包装
  • 半導体産業向けのクリーンブース

クリーンブースの導入

クリーンブースを導入する場合、考慮する必要がある設計要素には次のようなものがあります。

  1. 必要とするクリーン度
    まず、作業内容から必要なクリーン度を決めます。
  2. 設置する部屋の大きさとクリーンブースのサイズ
    次に、作業に必要なスペースを決めます。
  3. クリーンブースの種類や脚部
    クリーン度やクリーンブースのサイズに合わせてクリーンブースの種類を選びます。また、移動の可能性などを考慮してキャスターを付けるか、固定するかなどを決めます。
  4. クリーンブースの壁面
    壁面の種類を選択します。
  5. クリーンブースの入口
    クリーン度に合わせて入口の種類を選びます。また、設置場所に合わせて入口の場所やサイズを決めます。
  6. FFUと照明、点検口など天井のレイアウト
    クリーン度に合わせてFFUの数が決まっているので、作業場所に合わせて配置や点検口などを決めます。また照明の数や場所も決めます。
  7. 配線やスイッチの位置
    電源ケーブルの長さやスイッチの位置を決めます。

クリーンブースの利点

クリーンブースには多くの利点があり、よくクリーンルームと比較されます。ここでは、クリーンブースの利点について項目を挙げ解説を行います。

手頃な価格

クリーンブースは、建設に必要な資材が少なくなります。短時間で少人数の作業員がクリーンブースを立ち上げて稼働できるようになり、コストがさらに削減されます。クリーンブースは、迅速に必要な部材を製造し組み立てることができますが、必要なクリーン度を損なうことはありません。また、予算に合わせて必要な工程だけにクリーン化したり、追加したりすることによりコスト削減ができます。

デザイン

クリーンブースにはアルミフレームと透明度の高い帯電防止フィルムが使用されています。デザイン性の優れたアルミニウムフレームは、軽量で柔軟性があり簡単に折れたり割れたりしません。また、リサイクルも可能です。透明度の高い帯電防止フィルムは、強度があり汚れが付きにくく、簡単に掃除できます。

カスタマイズ

クリーンブースは、カスタマイズ可能なクリーンルームとしての側面があります。クリーンブースは、スペースのサイズに関係なく、あらゆるスペースに適合するように構成できます。クリーンブースは、ISOのクリーンレベルを満たすための構成や用途に合わせたオプションの組み合わせなど最適な構成にカスタマイズすることが出来ます。さらに、企業のアプリケーションや生産の要求が変化すると、変化する条件に合わせてクリーンブースを拡張または縮小することができます。

省スペース

限られたスペースであっても、コンパクトで柔軟なクリーンブースは、状況に合わせて適用できます。クリーンブースは、どこにでもフィットし、移動が可能です。ただし、部屋と同じサイズのクリーンブースは、空気の循環の面で適用できません。

簡単な組み立て

クリーンルームを計画する場合、専門家、技術者、設計者、建設作業員からなるチームが、部屋のクリーンレベルを満たすすべての要素を建築物から検討する必要があります。クリーンブースの場合、クリーンブースメーカーに必要な寸法と構成を提供し、最短数日でクリーンブースを設置できます。設計・製造はすべてメーカーが行っており、組み立てはメーカの作業員やユーザーで行います。メーカーは、既存のパターンにユーザーの条件を取り入れて、それに合わせてクリーンブースを設計します。

品質

どのクリーンブースも状況に関係なく、確立された基準を満たすことが保証されています。信頼性という要素は、クリーンブースの主要なセールス ポイントの 1 つです。ただし、同じクリーンレベルのクリーンブースであっても性能という面では差があります。必要なクリーン度に達するまでの時間やクリーン度のムラ、クリーン度を維持できる期間など数字で表されにくい面もあります。

「クリーンブース」のよくあるご質問

用語
使い方
導入
移設・拡張

まとめ

クリーンブースは、HEPAフィルターを備えたFFU、アルミフレーム、透明な帯電防止ビニールの壁、入り口、および照明を備え、汚染物質や粒子状物質のない優れた作業スペースを提供するように設計されたスペースです。
クリーンブースの一般的なサイズは、1.5m×1.5mから最大 5mx5mの範囲です。クリーンブースの柔軟性により、顧客のニーズに応じて複数の構成とサイズを設計および作成することができます。
クリーンブースは、サイズが小さく、移動が可能で、限られたスペースに収まるので、さまざまな用途に使用できます。
クリーンブースは、その低コストと柔軟性、クリーン環境の必要性により、需要が増えています。軽量で、組み立ても簡単です。
クリーンブースが満たすべき最も重要な基準は、ISO 分類の要件です。クリーンブースの設計では、クリーンルームに見られるような密閉性を実現できないため、最高の ISO 規格を満たすことはできません。