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技術コラム

 

電気は私たちの生活に欠かせない、とても便利なものです。その一方で、電気は目に見えないため、漏れに気づきにくかったり、高いエネルギーを持っていたりすることもあり、火災の原因になることがあるなど、使い方を誤ると重大な事故につながるケースもあります。電気を安全に使うために、電源に求められる規格と安全な使い方について解説します。

電源に求められる安全規格とは

電源をはじめとした電気機器は、安全なものでなければいけません。そのため、電気機器が安全なものとなるように定められた法律があります。これが電気用品安全法です。

電気用品安全法の目的は、「電気用品の製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止する」と定められています。

これに適合することを証明するため、電気機器には適合性検査や工場検査が義務付けられています。電気安全法では、電気用品を「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」の2つに分けています。

特定電気用品とは、電気用品の中でも特に安全性を重視する、電線やヒューズ、電熱器具などを含む116品目が該当します。特定電気用品以外の電気用品は、電熱器や光源など、特定電気用品に該当しない341品目が該当します。特定電気用品以外の電気用品の341品目はこちらに記載されています。電気用品安全法の規格はJIS日本産業規格で定められています。

特定電気用品に「直流電源装置」が含まれていますが、これは民生用のACアダプタなどが該当し、工場の内部で使われる産業用の電気機器や、電気機器に組み込まれる部品には適用されません。

電気用品安全法に準じている電気機器には、PSEマークの表示が義務付けられています。PSEとは「Product+Safety+Electrical appliance & materials」の略です。PSEは国際規格と日本独自のJIS日本産業規格をうまく組み合わせて作られている規格です。

特定電気用品
特定電気用品|松定プレシジョン
特定電気用品以外の電気用品
特定電気用品以外の電気用品|松定プレシジョン

PSEが参照している国際的な電気関係の規格はIEC(国際電気標準会議)規格です。IEC規格とは、1906年に国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)通称IECで制定された国際規格です。IECでは、電気通信分野を除いた、電気、電子分野について、国際的な標準化を行っています。

IEC規格の中でも、特に電源が関わるのはIEC62368-1(Audio/video, information and communication technology equipment - Part 1: Safety requirements オーディオ/ビデオ、情報および通信技術機器-第1部:安全要求事項)やIEC61010-1(Safety requirements for electrical equipment for measurement, control, and laboratory use - Part 1: General requirements 計測、制御及び試験所使用電気機器の安全要求事項-第1部:一般要求事項)などの規格です。参照するIECは電源の用途によって変わります。

海外の規格

日本以外の国も、各国がそれぞれ独自の規格をもっています。電気機器を他国に輸出したり、他国で使ったりする場合には、それぞれの国が定める規格に適合していなければいけません。

代表的な国とそれぞれの規格は次のとおりです。

  • 米国:UL62368-1,UL61010-1
  • カナダ:CAN/CSA-C22.2 No.62368-1、CAN/CSA-C22.2 No.61010-1-12
  • EU:EN62368-1、EN61010-1

これらの規格は、IECによって定められたIEC62368-1,IEC61010-1に準拠した規格になっています。

またここに紹介した国以外でも、それぞれの国独自の基準がある国や、ISOを取り入れている国などもあります。輸出したり、製品を現地で使ったりする場合には、それぞれの国の規格を確認しておく必要があります。

安全試験とは

電気機器に適用される安全試験とは、機器の安全性を保障するために行われる試験です。安全試験では、機器が感電や火傷などを起こしにくい設計になっているか、や、万が一故障した場合にも、二次的な被害が拡大しにくい設計になっているかを確認します。

これは、国際規格をはじめとする国内外の安全規格に基づいた試験であるため、試験の内容や方法も規格によって定められています。

安全試験には、高電圧試験(耐電圧試験)や漏れ電流試験、絶縁抵抗試験 、接地導通試験などが含まれています。

電気安全試験の実施は、製品を製造する際のコンプライアンスに関わるものです。また製品の利用者が、製品が原因でけがをした場合の、高額訴訟のリスク軽減にもつながります。

また安全試験以外にも、製品がノイズなどにより誤作動起こすのを防ぐ設計になっているかを調べる試験もあります。EMCとよばれる試験です。

EMC(Electromagnetic compatibility)では、製品が外部からの電磁波を浴びた際に誤作動を起こさない設計になっていることを示すEMS(Electromagnetic susceptibility)規制に適合していることと、製品から他の機器の誤作動につながるような電磁波が出ていないことを示すEMI(Electromagnetic interference)の両方を満たす必要があります。

規格の試験に用いられる松定プレシジョンの電源機器

安全試験など、電気機器が規格に適合していることを確かめる際には、交流電源やバイポーラ電源を用います。このような電源を使うことで、定格の電圧や周波数を再現するだけでなく、瞬停など異常な電流状態を模擬することもできます。

また機器のノイズを測定する際には、供給する電源にノイズがあると正しく測定できないため、これらの電源を用いて、安定した電流を供給します。

また高圧電源は、絶縁性の試験にも用いられます。絶縁試験には、絶縁抵抗試験と耐電圧試験(絶縁破壊試験)があります。絶縁されている部位に一定の電圧をかけて漏れ電流を測定したり、高電圧をかけて、絶縁破壊されないかを確認したりします。

他にも、バッテリー機器の安全性や性能評価用にバッテリーの充放電サイクル試験装置などもあります。リチウムイオン蓄電池の不具合は、火災など大きな事故につながる為、規制の改訂などがおこなわれています。