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技術コラム

 
馬力からkWへ、エンジンからモーターへの単位変換

SDGsにも挙げられているCO2排出抑制の高まりにより、エンジンからモーターへの移行が進み、それに合わせて単位も馬力からkWへの変更が進んでいます。今回はエンジンとモーターに焦点を当ててお話ししていきます。

車のエンジン出力はどう表す?

馬車から内燃機関を使ったエンジンを搭載した交通手段へと変化し、それが自動車を中心としたモータリゼーション社会をもたらしました。そしてそれに合わせて出力の単位も変わってきました。そして今、石油燃料を元にした内燃機関エンジンからモーターを利用した電気自動車(EV)へと移り変わりつつあります。そもそも出力はどの様に表すのでしょうか。まずは自動車のエンジンから考えてみましょう。
エンジンの出力は仕事率を使って表すのが一般的ですが、歴史的にはながらく「馬力」が使われてきました。これはジェームズ・ワットが蒸気機関を発明した際に、どれくらいの仕事を行えるのかをわかりやすく例えるため、標準的な荷役馬1頭が継続的に行える仕事を基準としたことに由来します。馬力にはヤード・ポンド法に基づく英馬力(HP)と、メートル法に基づく仏馬力(PS)の2つがあります。日本では後者の仏馬力を使っていて、
1仏馬力 = 735.5W(ワット)
と定義されています。ただしこれは経済産業が所管する計量法の中で特例的に使用が認められている単位と換算式であり、本来は仕事率の単位であるワット(W)で表すべきものとされています。
ちなみに
1英馬力 = 745.7W(ワット)
です。

エンジンの出力としてもう一つ重要な概念が「トルク」です。トルクは回転運動に関連する概念で、力と距離の積で表されます。単位で書くと「N・m(ニュートン・メートル)」ですが、どういうものなのかわかりにくいですよね。
わかりやすく言えば、トルクは自転車をこぐときの踏み込む力に相当します。ですから加速性能に関わってくると考えてかまいません。現在の自動車ではkgf・mで書かれている場合もありますが、今後はN・mに統一されることになっています。kgf・mとN・mの換算は重力加速度をかけた形となり、次の式で行う事が可能です。
10kgf・m = 98.06N・m
ちなみにガソリンエンジンとディーゼルエンジンを比較すると、ディーゼルエンジンの方が低い回転数でのトルクが大きくなります。つまり停止状態からの加速性能はガソリンエンジンよりもディーゼルエンジンの方が優れているのです。

ガソリンエンジン(左)とディーゼルエンジン(右)の出力とトルク(エンジンの出力とトルク)- 馬力からkWへ、エンジンからモーターへの単位変換
ガソリンエンジン(左)とディーゼルエンジン(右)の出力とトルク(エンジンの出力とトルク)

一方、先に述べた出力もトルクと関連しています。次のような関係式で表すことができます。
出力=トルク×回転数
ですので、高いエンジン回転数を達成できるガソリンエンジンの方が最大出力は大きくなります。また最高速度は最大出力に比例しますので、ガソリン車の方が(車種にもよりますが)ディーゼル車よりも速く走ることができます。

電気自動車やハイブリッド車のモーター出力

では、今後主流になって来る電気自動車や、その前段階として普及しているハイブリッド車のモーターはどうなっているのでしょう?単位は先ほど紹介したWを1000倍した「kW(キロワット)」を単位としています。換算式に当てはめると約1.360仏馬力ということになります。

この出力は先ほどもお話ししたとおり、トルク×回転数で決まります。ではモーターのトルクはどのようになっているのでしょうか。簡単に図にしてみました。

モーターの場合、最大トルクは回転数が0に近い所に存在します。つまり回転し始めが最も大きなトルクを出しています。
ところが、回転数が上がると比例して誘起電圧が大きくなります。モーターが回転を維持するために必要な負荷となり、回転数が上がれば上がるほどトルク自体は下がっていくこととなります。
そのため、最大回転数は発生したトルクと負荷(誘起電圧)がバランスする点(ポイント)となります。それ以上は負荷が大きくなりすぎて実用的ではありません。
そして回転数が0から最大となるポイントとの間のどこかに最大出力を出す点があります。

モーターの回転数とトルク - 馬力からkWへ、エンジンからモーターへの単位変換
モーターの回転数とトルク

2022年5月現在のEVではリマック社のネヴェーラという車種が最高出力1408kWです。一般的な日産のリーフは160kWですので、なんと8.8倍もの差があるのです。ちなみに1408kWは仏馬力で表すと
1408 × 1000 ÷ 735.5 = 1914PS
となります。以前あった280馬力制限からすると7倍近い出力です。この280馬力をkWに換算すると205.9kWです。国産メーカーのEVは100~160kWのものが多いのは、以前のこの規制に消費者も慣れてしまっているからかもしれません。

エンジンの特性とモーターの特性の違い

ここまで読んでくると、エンジンとモーターには特性に違いがあるということが分かると思います。実際に自動車を運転するという観点で見てみましょう。
すると、まずは停止状態からの加速性能を見てみます。これは最大トルクがどのタイミングで出せるかが重要です。モーターは回転を始めた直後の低回転で最大トルクが出るようになっています。ですからEVは加速性能においてガソリン車を上回ると考えることができます。

一方、最大出力についてはモーターの方は性能次第といったところでしょうか。モーターには回転数を上げると負荷が大きくなるという特性がありました。ですので、この負荷をいかに少なくできるのかが回転数を上げる、つまり出力を上げる最大のポイントだということができます。

バッテリの充電性能もkW

しかしEVの性能を考える上ではモーターの特性の違いだけが分かっていれば良いわけではありません。実際に運用を始めるとすると、1回の充電にどの程度時間がかかるのか、バッテリの容量単位ではどうなのか、そもそもバッテリ容量はどの程度なのか。様々に比較するべき指標が出て来ます。

そもそも充電性能はどの様にして測るのでしょうか。実はモーターの出力と同じで、充電器の能力である充電性能の単位もkWなのです。単位を分解してみればわかる話ですが、そもそもバッテリの単位は「どれくらいの出力をどれぐらいの時間出せるのか」ですから「kWh(キロワットアワー)」です。この数値が大きければ大きいほど、同じ出力(kW)を長時間(h)出し続けられる、または一定の時間(h)内に供給できる出力(kW)が大きいことを意味します。

このバッテリをどれくらいの時間で充電できるのかというのが充電器の能力なのですから、
kWh ÷ h = kW
ということになります。つまり充電器の能力の単位もkWで、出力とまったく同じというわけです。
当然短い時間で大容量の充電ができる充電機器が優れているわけですから、皆さんの身の回りにあるモバイルバッテリからEVに至るまで、充電器の出力というのは大変重要な指標です。
もちろんバッテリ自体が優秀である必要もあります。特に単位質量あたりや単位体積あたりの充電容量が大きいものが優秀です。前者は「重量エネルギー密度」、後者は「体積エネルギー密度」と呼ばれています。
例えばリチウムイオンバッテリでは18650サイズの場合、重量エネルギー密度は201Wh/kg、体積エネルギー密度は520Wh/Lです。対してアルカリ電池では単三電池サイズでそれぞれ36Wh/kg、109Wh/L、角型の鉛蓄電池では40Wh/kg、82Wh/Lとなっています。

燃費の代わりに電費が基準に

最後にランニングコストというか、燃費の話です。これまでガソリン車などの場合は何リットルでどの程度の距離を走ることができるかというkm/L(キロメートル毎リットル)で燃費を表していました。これにタンクの容量をかければ最大走行距離がわかるわけです。もちろん計測条件もありますので、条件を揃えないといけません。日本とアメリカでは計測の前提条件が異なるため、日本の燃費はアメリカではありえない数値になっていたわけですが...
さてEVの場合はバッテリの容量でどれだけの距離を走ることができるかということになるのはガソリン車との比較で何となく分かると思います。ですからkm/kWh(キロメートル毎キロワット時)というのが燃費となります。どちらかと言えば「電費」とでも言う方が自然でしょうか。

2022年現在では最も良いEV(BMWのモデルi3)で8.5km/kWhというところです。一方最も電費の悪いEVだと3.9km/kWhですので、倍以上の開きがあります。今後は各社ともこの「電費」をどれだけ良くするのかに注力してくるものと考えられます。

参考文献