技術コラム

放射線の人体への影響とX線装置の安全性を解説 トップイメージ

放射線を受けると人体はどうなる?

放射線とは、放射性同位元素の崩壊により発生する、アルファ線やベータ線、ガンマ線、宇宙から飛来する宇宙線、人為的に発生させる、X線管等のX線発生装置、加速器、原子炉などから発生する粒子線や電磁波の総称です。詳しくは「放射能と放射線、放射性物質はどう違う?」で紹介しています。

人が放射線を受けたときの影響は、確率的影響と確定的影響に分かれます。人が放射線を受けると放射線の電離作用により、細胞のDNAが傷つきます。受けた放射線が少量の場合、人体には細胞が再生産される際にDNAを修復する力があります。受けた放射線がごく少量であれば、ほとんどが問題なく修復されます。

しかし、修復の際に細胞のDNAが不完全に修復されるケースがあります。すると細胞が突然変異を起こし、がん細胞に変化したり、遺伝的な影響が発生したりする場合があります。これが確率的影響です。

DNAの損傷は放射線だけでなく、喫煙や飲酒、食事や化学物質によっても発生するため、個別のケースにおいて、がんの原因を放射線の影響であると言い切るのは困難です。

そのため「これ以上の被ばくをすると症状が現れる」という境界が存在しません。ただし、被ばくしている人のグループとしていない人のグループの発がん率を比較すると、被ばくによる発がんのリスクが研究できます。

確率的影響では、100~200mSvの放射線を受けた場合の発がんリスクは野菜不足と、200~500mSvの放射線を受けた場合の発がんリスクは運動不足と同程度といわれています。受ける放射線の量が多くなればなるほどリスクは上昇しますが、症状は重くなりません。

一方で一度に大量の放射線を受けてしまうと、DNAが損傷して再生産が不可能になった細胞の数が再生産可能な細胞の数を上回り、細胞の修復が追い付かなくなります。これを確定的影響といいます。

確定的影響には「これ以上の被ばくをすると症状が現れる」という境界が存在します。この境界をしきい値と呼びます。確定的影響では、細胞そのものがダメージを受けるのではなく細胞の再生産に影響が出るため、被ばく直後は目に見えた症状はあまり出ません。

しかし放射線を受ける場所や量によって、脱毛や不妊、白内障などの症状が現れます。被ばく線量が多くなると症状はより重くなります。

人体への影響 ガンマ線急性収集線量のしきい値(Gy)
一時的不妊(精巣) 0.1
造血能低下(骨髄) 0.5
白内障・視力低下(眼) 0.5
永久不妊(卵巣) 3
一時的脱毛(皮膚) 4
皮膚発赤(皮膚) 3〜6
皮膚熱傷(皮膚) 5〜10
永久不妊(精巣) 6

出典:環境省ホームページより作成

飛行機に乗ると被ばくするって本当?

人は自然に生活している中でも微量の放射線を受けています。自然に受ける放射線は、地上の岩石や食物、肺に取り込んだ空気から受けており、これを「自然放射線」と呼びます。

自然放射線による年間の被ばく線量は、よく食べられる食物などによっても変わりますが、日本平均でおよそ2.1mSvです。

自然放射線には宇宙から放射されるものがあり、宇宙線と呼ばれています。飛行機に乗ると高度が上がる分、地上よりも多い宇宙線を受けます。

しかし、日本から欧米まで飛行機で1往復しても、受ける被ばく量は0.1mSvほどです。一般の人であれば、この数字は通常の生活での年間被ばく量に比べて十分に小さく、健康への影響はありません。

ただし、航空機の乗務員の場合、飛行機に乗る機会が非常に多いため、宇宙線による年間の被ばく量は増えます。そのため、年間の被ばく量が5mSv以内になるよう努力するガイドラインが設けられています。

天然の岩石に含まれる放射性物質が他より多く、年間の自然放射線量が5mSvを超える地方もありますが、これまでに特別な健康被害などは報告されていないため、航空機乗組員の年間被ばく量も、特に問題はないと考えていいでしょう。

X線装置は安全?

X線は私たちの身近で広く利用されている放射線の1つです。病院などで一般的に利用されるレントゲンも、X線を身体に照射し、密度の高い部分と低い部分の透過率の差を利用して、体内の様子を可視化しているものです。

X線を照射しているので被ばくします。とはいえ、医療用の胸部X線撮影1回分の被ばく量は0.02~0.1mSvと非常に低いため、健康上のリスクはありません。

レントゲンと同様にX線を使用する医療用CTも、1回の被ばく量は5~30mSv程度でしたが、近年は画像処理技術を併用することで、被ばく量を従来の1/10程度にまで抑えられる低被ばくCTの開発も進められています。

また医療用レントゲンだけでなく、非破壊検査などに使われる工業用X線装置は、労働安全衛生法で取り扱いや管理の仕方が定められています。例えば、X線装置を使用する人は線量計を装着し、その結果を記録することや、半年に1回の健康診断を受けることが義務付けられています。

さらに、X線装置の規模に応じて、遮へい壁などを備えた放射線装置室内に設置する必要もあります。放射線は水と違い、目で見ることができないものですから、利用にあたっては正しい知識を持ち、定められた決まりを守って取り扱わなければいけません。

医療用レントゲンや工業用X線装置は、放射性物質が装置内にあるわけではありません。電気の力によりX線を作り出しています。そのためX線装置であっても、通電していない限りは、放射線が漏れ出すような危険は一切ありません。

松定プレシジョンでは、下記ページに紹介するようなX線非破壊検査を展開しています。

松定プレシジョン X線非破壊検査装置一覧

X線非破壊検査

(2020/8/17)

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参考文献

  • 環境省ホームページ
    https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-03-03-03.html