技術コラム

蛍光X線とは

物質に一定以上のエネルギーを持つX線を照射すると、物質中の原子の内殻電子が励起され、それによって生じた空孔(ホール)に外殻電子が移る際に内殻と外殻のエネルギー差に対応したX線が放出されます。このX線を蛍光X線といいます。
内殻と外殻のエネルギー差は元素ごとに固有です。そのため、蛍光X線のエネルギーは元素ごとに固有です。また、原子核に近い殻ほどエネルギーが高く、「K殻>L殻>M殻」となっています。電子がL殻からK殻へ遷移する時に放出される蛍光X線をKα線、M殻からK殻へ遷移する時に放出される蛍光X線をKβ線といいます。

蛍光X線イメージ

測定原理

蛍光X線のエネルギーが元素ごとに固有のものであることから、対象試料の蛍光スペクトルを見ることで構成元素の分析が可能となります(図2参照)。また、スペクトルの強度を測定すれば、対象試料中の特定元素の濃度も分かります。

図2.蛍光X線スペクトル(サンプル)

蛍光X線2.jpg

分析装置

蛍光X線分析装置は大きく2種類に分けられます。1つは波長分散型蛍光X線分析装置(WDX)で、蛍光X線をソーラースリットで整え(ほぼ平行な成分を抽出)、分光結晶を用いて分光し計測するタイプです。検出感度が高く、エネルギー分解能も高いため、より高精度の検出が求められる場合に適しています。もう1つはエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)で、一般的に半導体検出器が用いられています。検出器自体にエネルギーを分析する機能があるため、装置の小型化や短時間での分析、多元素同時分析が可能といった特長があります。

定量分析

定量分析とは、対象試料中の元素の含有率を決定することです。蛍光X線分析では大きく分けて検量線法とFP(ファンダメンタルパラメータ)法があります。

検量線法:同じ材質で物質の含有率が分かっている試料(標準物質)を測定し、得られた結果を標準(検量線)として未知試料の定量を行う方法です。

FP法:蛍光X線の発生原理に基づいて、測定した未知試料の蛍光X線強度から試料の組成を理論的に推定する方法です。検量線のないものや組成の分からないサンプルの測定には、このFP法が用いられます。

試料調製法

蛍光X線分析は固体・液体・粉体など多様な試料を壊さずに分析することができますが、試料の形状や容器への試料の入れ方によって分析結果に差異が生じる可能性があります(図3)。従って、試料を調製する際は以下のポイントが重要となってきます。

試料調製のポイント

  • 均質となるように処理する
  • 同一試料品種では標準試料や各測定試料間で同一の調製を行う
  • 汚染や混染(コンタミネーション)を避ける

図3.試料の表面粗さと粒度による影響

塊状試料の表面が粗い場合と細かい場合の違いを図で説明しています。

各種有害物質規制とその規制値

環境問題として有害性化学物質対策に注目が集まっています。この有害性化学物質の拡散防止の為にRoHS指令をはじめとした各種有害物質規制が出てきています。このような動きの中で、簡単かつ迅速にスクリーニング分析が出来る蛍光X線分析装置(XRF)が必要とされてきています。

※各種規制の法的な解釈は改正されていく場合があります。公式機関の見解等を代弁しているものではありません。法規など原文を参照し各位の責任においてご利用ください。

RoHS指令

2003年にEUよりRoHS(Restriction of Hazardous Substances の頭文字)指令が公布され、2006年7月に施行されました。そのため、EU加盟国へ製品を出荷するためにはRoHSの定める6種の有害物質の製品含有量を指定値以下にする必要があります(表1)。蛍光X線分析装置(XRF)は非破壊かつ非常に早い時間で測定出来るため、有害物質のスクリーニング用などで重宝されています。また、XRFは定性・定量分析を行うことが可能で、6価クロムはクロム総量として検出し、PBB・PBDEは臭素総量として分析します。

RoHS規制6物質の表画像

土壌汚染対策法

2003年2月、土壌汚染による健康被害の防止と汚染状況の把握を目的に土壌汚染対策法(土対法)が施行されました。この土対法に定める特定有害物質の中で、区分第二種の重金属の成分を蛍光X線で分析することができます。
指定物質とその基準値は表2のようになっており、定量方法は全砒素と全鉛のみ公定法(JIS K 0470)で制定されています。

RoHS規制6物質表

玩具類に関する規制

玩具の安全に関して欧州玩具安全規格の第三部(EN71 part3)に規制されています。
6歳以下の小児用として設計された玩具のうち口に含む、あるいは呑み込んだりする可能性のある部品における重金属の経口摂取について規定されています。対象金属元素とその規制値は表3のようになっています。
日本では、玩具安全基準(ST-2002)として基準が設けられており、2006年5月には鉛の規制値(90ppm)が追加されました。このST基準には食品衛生法の他、EN71なども検査項目として取り入れられています。

玩具対象の規制物質と規制値(EN)表.jpg

ハロゲンフリー対策

電子材料などに使用されていたハロゲン化合物は、難燃剤の材料として広く使用されてきましたが、これらは燃焼時に有害なガスが発生する(特に高温時にはダイオキシンが発生する可能性あり)ことや、オゾン層破壊防止などの環境への配慮から、ハロゲンフリー化が強く求められています。しかしハロゲンフリーの定義については、明確なものはありません。
例えば日本電子回路工業会(JPCA)はJPCA規格としてプリント配線に関してハロゲン化合物含有量の規制値を設けており(ハロゲンフリー銅張積層板試験方法 JPCA-ES01)、プリント配線板に使用されるエポキシ樹脂やフェノール樹脂中に含まれる塩素(Cl)と臭素(Br)の総量が定められています(表4)。
同規格はIEC 規格の61249-2-21(国際電気標準会議)やIPC規格の4101B(米国電子回路協会)に採用されています。

JPCA規格における塩素と臭素の総量表