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技術コラム

電気抵抗の役割と抵抗値の読み方

■電気抵抗とは

電気には電圧、電流、抵抗の三要素があり、組み合わせによって電気の流れ方が決まります。電圧と電流、抵抗の関係はオームの法則に従い、E(電圧)=I(電流)×R(抵抗)で表されます。電気抵抗とはこのような電気の三要素の一つで、単位はΩ(オーム)です。

抵抗の原因は物質によって異なります。金属の場合、電気は金属中に存在する伝導電子によって運ばれます。しかし、結晶格子の振動による粒子的な干渉(フォノン)による影響を受けると、流れがせき止められます。これが金属における電気抵抗になります。

一方、絶縁体や半導体には伝導電子が存在しません。価電子帯と伝導帯での電荷の移動によって電気が流れます。ただし、価電子帯と伝導帯は近接していないため、価電子にエネルギーを供給しなければ電気は流れません。このとき価電子が必要とするエネルギーが抵抗になります。

抵抗とは電気の流れにくさを表し、金属のような伝導体は抵抗が低く、ゴムや皮のような不導体は抵抗が高くなります。

一般に、抵抗で消費された電力は熱エネルギーとして放出されます。そのため、たとえば過電圧や過電流が発生すると、想定する以上の加熱が電子機器に起こり、機器が焦げたり火災につながったりする恐れがあります。一方で、同じ電圧の場合、抵抗値が高いとオームの法則により流れる電流が減少し、消費電力は低くなります。

■抵抗器とは

電気回路に抵抗を持たせたい場合、抵抗器を使用します。抵抗器とは電気を流れにくくするために使用するパーツで、回路内の任意の場所に流す電流や、印加(装置に信号を送ったり、電圧を加えたりすることの意)する電圧の調整のために使われます。

抵抗器の種類には次のようなものがあり、種類ごとにそれぞれ特徴があります。

炭素皮膜抵抗器

最も安価で、幅広い抵抗値がある最も一般的な抵抗です。セラミックの表面を炭素皮膜で包んだ抵抗で、カーボン抵抗ともよばれます。定格電力(ワット数)は1/4W(0.25W)、1/2W(0.5W)、1Wなどがあります。安価で扱いやすいのがメリットですが、温度が上がると抵抗値が下がってしまうのがデメリットです。

ソリッド抵抗器

炭素の粉と樹脂を混ぜて固めた抵抗器で、高耐圧高抵抗のものも作れるのが特徴です。丈夫で過酷な条件下での使用に強いですが、精度が低くコストが高いため、近年では炭素皮膜抵抗のほうが多く使われています。定格電力(ワット数)は1/4W(0.25W)、1/2W(0.5W)などがあります。

金属皮膜抵抗器

炭素皮膜抵抗と似ていますが、セラミックをニッケルクロムなどの金属で覆っているのが特徴です。キンピともよばれます。温度係数が小さく比較的高精度ですが、やや高価になります。定格電力(ワット数)は1/4W(0.25W)、1/2W(0.5W)、1Wなどがあります。

酸化金属皮膜抵抗器

セラミックの表面に酸化スズなどの金属酸化物の被膜で包んだ抵抗です。サンキンともよばれます。被膜が酸化金属なので、高温になっても燃焼しないのが特徴なため、中電力用に使われるケースが多いです。定格電力に対し安価なのもメリットです。しかし精度や温度特性は金属被膜抵抗よりも劣ります。定格電力(ワット数)は1/2W(0.5W)、1W、2W、3Wなどがあります。

巻線抵抗器、セメント抵抗器、ホーロー抵抗器

ニクロム線など、抵抗値の高い金属の細い線をセラミックのボビンなどに巻きつけたものです。これをセメントで固めるとセメント抵抗器、ホーローで固めるとホーロー抵抗器になります。抵抗値は低くても大きな電力を得られるのが特徴です。温度係数も小さく、耐熱性がいいのがメリットですが、コイル構造をしているためインダクタンス成分をもちます。1/8W~100Wの幅広い電力に対応します。

抵抗ネットワーク

複数の抵抗器を一つのパッケージにまとめたものです。目的や用途にあわせて、さまざまな抵抗器を組み合わせて作ります。

半固定抵抗

トリマともよばれる抵抗器で、ドライバーを用いたり、部品を追加したりしてつまみを回し、抵抗値を変更できる可変抵抗器です。

抵抗の使われ方には次のようなものがあります。

電流制限抵抗

電流が流れすぎないように制限するために使う抵抗です。例えばLEDを点灯させる場合、直接LEDに電源を接続するとLEDが破損してしまいます。LEDと電源の間に抵抗を直列に入れる必要があり、これを電流制限抵抗と呼びます。順方向電圧(Vf)の電圧が2VのLEDを5Vの電源を接続し、10mAの電流を流して点灯させる場合、R=(5V-2V)/0.01A=300Ωの電流制限抵抗が必要になります

分圧回路

分圧回路は、分圧器(Voltage divider、ボルテージデバイダー)とも呼ばれ、電圧を分割するのに用いる回路や抵抗を指します。電子回路の初歩の計算問題などで紹介されていますが、高電圧回路など直接電圧の測定ができない場合に、分圧回路を使って高電圧を測定します。また、光電子増倍管では、多段のダイノードに分圧して電圧を印加する必要があります。その場合にも分圧器(Voltage divider、ボルテージデバイダー)を使います。

プルアップ抵抗、プルダウン抵抗

スイッチやセンサーなど、外部信号をマイコンに入力する際に必要となる抵抗です。たとえば回路においてマイコンとスイッチを接続する場合、スイッチとマイコンのみを直列につないでしまうと、スイッチがオフになった際に、マイコンの入力端子がどこにも接続されていない状態になってしまいます。

この状態をハイインピーダンス(Hi-Z)やフローティングとよび、慣例的に「浮いている」とも表現されます。直接的な問題はありませんが、ノイズやサージの影響を受けやすくなり、回路の安定性が低下したり、マイコンの破損につながったりします。

このような事態を防ぐため、スイッチからみてマイコンと抵抗が並列になるように配置します。こうすることでマイコンの入力端子が常に抵抗に接続され「浮いている」状態を回避できるのです。これをプルアップ抵抗、プルダウン抵抗といいます。

プルアップ抵抗
プルアップ抵抗|電気抵抗の役割と抵抗値の読み方
プルダウン抵抗
プルダウン抵抗|電気抵抗の役割と抵抗値の読み方
終端抵抗

終端抵抗とは、Terminator(ターミネーター)またはTermination(ターミネーション)ともよばれ、特に周波数の高い通信ケーブルの末端に取り付ける電子部品です。

コンピュータ機器や無線機器など、高周波の信号を伝えるケーブルにおいて、信号が終端に向かうにつれて抵抗の値が変わってしまうと波形が徐々に形を変え、さらに終端で一部が反射してしまいます。

そのため抵抗器を用いて高周波信号のエネルギーを消費させる必要があります。このために用いられるのが終端抵抗です。

■抵抗値の読み方と選定時の計算

抵抗器の抵抗値は、表面に印刷されたカラーコードから読み取れます。抵抗器の一番右に印刷された色が誤差を、右から2番目に印刷された色が乗数を表し、それより左の色が抵抗の値を示す数字になります。

銀と金には誤差のみが割り当てられているため、まずは銀または金を見つけて右側にすると抵抗値がわかりやすいでしょう。銀や金が使われていない場合は、黒・赤・茶のいずれかが右側になります。

抵抗値の読み方|電気抵抗の役割と抵抗値の読み方
数字 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
誤差 ±20% ±1% ±2% ±10% ±5%

実際に読み方の例を見てみましょう。

炭素皮膜抵抗

この例では左側の黄色と紫が抵抗の数字、右から2番目の赤が桁数、一番右の金が誤差を意味します。
黄色は4、紫は7、赤は2で金色は±5%の誤差になりますので、この抵抗は4,700Ωとなります。

金属皮膜抵抗

次の例では、同じ4,700Ωですが、黄色は4、紫は7、黒は0、茶色は1。一番右の茶色が±1%の誤差になります。

なお、抵抗を選ぶ際には、まず抵抗の定格電力を確認します。おおよその目安として、回路の消費電力に対して2倍以上の定格電力をもつ抵抗を選びます。抵抗で消費される電力は次のように計算します。

たとえば、5Vで10mAの回路の場合、必要な抵抗はオームの法則により500Ωになります。したがって、抵抗で消費される電力は、0.01x5=0.05Wとなります。ですので0.1W程度の定格電力をもつ抵抗を選びます。

一方で12V、1.2Aの回路では、抵抗は10Ωになります。抵抗で消費される電力は、1.2x12=14.4Wとなります。このような定格電力をもつ抵抗はセメント抵抗やホーロー抵抗のみになりますので、それに該当する抵抗を選びます。

抵抗器は同じような形でも様々な抵抗値を持っている部品です。抵抗値の読み方を知り、間違いなく使用できるようにしましょう。

参考文献