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ファラデーケージとは?基礎から測定システム例まで解説

ファラデーケージとは

ファラデーケージとは金属などの導体で構成された箱(ケージ)状の構造物で、外部からの電場や電磁波の影響を遮断する特性を持ちます。この性質は雷や電磁ノイズなどによる障害から電子機器や重要なデータを保護する目的で、サーバールーム、医療機器、研究設備など幅広い分野で活用されています。

また、ファラデーケージは静電気の測定にも利用されています。一般に静電気の測定は、電位計を用いて近くの導体に誘導される電荷を検出する方法が多く用いられますが、測定対象が導体でなければ正確な測定ができません。このため、絶縁体や微粒子、粉体、液体といった導体でない物質を扱う電子材料、医薬品、化学品などの製造現場では、ファラデーケージによる静電気測定が重要な役割を果たしています。

原理と構造

ファラデーケージの基本原理は「電気を帯びた物体のまわりには電場が生じる」というガウスの法則に基づいて説明されます。つまり、電荷が存在すると、その周囲には電場が発生し、その強さは電荷の量に比例します。ここで、導体を電場の中に置くと導体内部の自由電子が移動し、外部の電場を打ち消すように表面で再配置されます。この結果、導体内部の空間は電場が存在しない"空白地帯"が形成されます。

この原理を応用したのがファラデーケージです。対象物を導体で物理的に囲むことで、その内部空間を外部の電場や電磁波の影響から遮断します。ファラデーケージの構造には、金属で完全に囲んだ箱型のもののほか、導電性の金属メッシュで構成された形式も一般的です。メッシュ型でも、網目が電磁波の波長より十分に細かければ、高い遮蔽効果を発揮します。

静電気測定においては、二重構造のファラデーケージが用いられます。帯電している測定物は内側の非接地ファラデーケージ内に置かれ、その電荷に応じて内側ケージの内壁には反対符号の電荷が誘導され、外側ケージの外壁には同符号の電荷が現れます。

ただし、このままでは外部からの電場の影響を完全に遮断できないため、外側のファラデーケージは接地されます。測定では内側と外側のケージ間の電位差を検出し、これにより測定物が持つ静電気の量を間接的に算出します。

設置環境と周辺回路

ファラデーケージを用いた静電気測定は、微小な帯電量を高精度に測定する必要がある現場で幅広く活用されるので、その測定精度を十分に発揮させるための測定環境と周辺回路の構成を適切に整えることが不可欠です。

設置環境としては、大気中に設けられたシールド室や製造ライン上の検査エリアが一般的です。シールド室とは金属などの導体で囲まれた空間のことで、ファラデーケージと同様に外部の電場や電磁ノイズを遮断する役割を果たします。
わずかな静電気の変化が製品の品質に直結する電子部品や微細材料の検査では、シールド室のようなノイズに強い環境が必要とされますが、そこまで繊細な測定が求められない用途では、製造ライン上に設けられた簡易な検査エリアで測定が行われることも一般的です。

周辺回路には静電センサや帯電計が使用されます。これらの装置は対象物の表面電位や帯電量を非接触で測定できるため、製品を傷つけることなく電気的な状態を把握するのに適しています。

さらに、測定時に安定した電場をつくり出すために、低ノイズの単極バイアス電源を組み合わせることが不可欠です。推奨される電源スペックとしては1kV〜30kVの範囲で正または負の電圧を安定して供給できる単極タイプであること、さらに、リップルが数十ppm以下で、長時間使用してもドリフトの少ない設計が望まれます。これにより、測定中の電圧変動による誤差を最小限に抑え、繰り返し測定における再現性を確保することができます。

ファラデーケージを用いた測定システム例

ファラデーケージを用いた静電気測定システムは、一般にファラデーケージ本体、静電センサ、低ノイズ電源で構成されます。

測定の精度をさらに向上させるためには、ケージの金属壁と試料を設置する治具(あるいは電極)との電位を一致させることが重要で、これによりケージ自体が生じさせる微小な静電誘導さえも打ち消すことができ、完全にシールドされた状態での静電気測定が可能になります。

実際の測定手順は以下の通りです。

  1. ケージの扉を閉じ、治具とケージ金属壁を同電位に調整することで、外部ノイズや内部誘導の影響を排除するための基礎条件を整えます。
  2. 試料に所定のバイアス電圧を印加し、内部の電荷が再分布して測定に適した静的状態になるまで待ちます(目安:10秒)。
  3. 電荷が安定した後、静電センサを用いて非接触で帯電量や表面電位を読み取る

このような構成と手順によって、微弱な電荷の変化も高い感度と再現性をもって測定することが可能となります。

メリット

ファラデーケージを使用する最大のメリットは、電磁波と静電気の両方を同時に遮断できる点にあり、測定環境や製造工程のノイズ対策として非常に有効になることです。

また、材料やサイズの自由度が高いこともメリットの一つで、金属製の箱型だけでなく必要に応じてメッシュ状の構造や複雑な形状でも製作可能であり、設置場所や用途に応じて柔軟に設計できます。これにより、小型の測定装置から大規模なシールドルームまで、多様なニーズに対応できるため、幅広い産業分野で活用できます。

主な用途

ファラデーケージの用途は多岐にわたり、特に産業現場での重要な役割を担っています。代表的な例として、EMC(電磁両立性)試験室、EMP(電磁パルス)保護室、そして静電帯電測定セルの三つが挙げられます。

EMC試験室:電子機器が外部の電磁波に影響されず、自らが発する電磁波が周囲に干渉しないかを検証します。ファラデーケージは厳密な電磁環境を作り出すために不可欠であり、製品の性能保証や規格適合のために必要です。

EMP保護室:強力な電磁パルスによる機器の破壊や誤動作を防ぐためのシールド空間です。近年注目されるサイバーセキュリティ対策や重要インフラの安全確保に欠かせない設備となっています。

静電帯電測定セル:製造現場での製品や材料の帯電状態を正確に把握するための環境を提供します。これにより、静電気が引き起こす品質低下や不良発生を未然に防ぐことが可能となり、安定した生産管理に貢献しています。

ファラデーケージを支える松定プレシジョンの高圧電源

松定プレシジョンの高圧電源は、ファラデーケージを用いた静電気測定の分野で高い信頼を得ており、用途に応じて最適化された複数のシリーズが展開されています。

また、高電圧の実験を安全に行うためにファラデーケージが用いられています。

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