Search waiting|松定プレシジョン

検索中...

用途・事例

グリッドフォーミングインバータ(GFM)とは?

再生可能エネルギー時代を支える次世代電力変換技術

はじめに

近年、脱炭素化や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力系統の運用方法は大きな転換期を迎えています。太陽光発電や風力発電は世界中で急速に普及していますが、その一方で、従来の電力系統を支えてきた同期発電機の割合は減少しています。

この変化に対応するために注目されているのが「グリッドフォーミングインバータ(Grid-Forming Inverter: GFM)」です。

従来の電力系統と同期発電機

従来の電力系統は、火力発電所、水力発電所、原子力発電所などに設置された同期発電機を中心に構築されてきました。

同期発電機は電力を供給するだけでなく、
  • 系統周波数の維持
  • 電圧の安定化
  • 慣性エネルギーの供給
といった重要な役割を担っています。

特に、巨大な回転体が持つ物理的な「慣性」は、急激な負荷変動や発電量変動が発生した際の周波数変動を瞬時に抑制する効果(クッションのような役割)があります。

再生可能エネルギー拡大による課題

太陽光発電や風力発電の多くは、パワーコンディショナやインバータなどの電力変換装置を介して電力系統へ接続されています。

これらの設備には、系統に直接同期して回る物理的な回転体が存在しない(風力発電には回転体がありますが、インバータを介することで系統の周波数とは電気的に切り離されている)ため、十分な慣性を提供できません。

再生可能エネルギーの比率が高まるにつれ、
  • 周波数変動の増加
  • 系統安定度の低下
  • 停電リスクの増加
といった課題が世界各地で顕在化しています。

グリッドフォローイングインバータ(GFL)とは

現在広く利用されているインバータの多くは「グリッドフォローイングインバータ(GFL)」と呼ばれます。

これらのインバータは、既存の電力系統が形成する電圧や周波数を検出し、それに同期して動作する「電流源」として機能します。
そのため、安定した電力系統が存在する環境では高い性能を発揮しますが、系統が存在しない環境や大規模停電時には自ら系統を形成することができません。

グリッドフォーミングインバータ(GFM)とは

一方、グリッドフォーミングインバータ(GFM)は、自ら電圧波形と周波数を生成し、電力系統の基準となることができる「電圧源」として動作するインバータです。

同期発電機の動作を模擬する制御技術を用いることで、
  • 仮想慣性の提供
  • 周波数安定化
  • 電圧制御
  • 系統形成(ブラックスタート)機能
を実現します。

近年では、Virtual Synchronous Generator(VSG:仮想同期発電機)やVirtual Oscillator Control(VOC:仮想発振器制御)などの制御技術が研究・実用化されています。

グリッドフォローイング(GFL)とグリッドフォーミング(GFM)の違い

項目 グリッドフォローイング(GFL) グリッドフォーミング(GFM)
電気的特性 電流源(系統の電圧を測り電流を注入) 電圧源(自ら電圧波形を形成)
動作方式 系統追従 系統形成
周波数基準 系統依存 自律生成
慣性供給 なし(一部、検知型の擬似慣性あり) あり(瞬時・本質的な仮想慣性)
単独運転 困難(ブラックスタート不可) 可能(ブラックスタート可能)
マイクログリッド 限定的 適している
再エネ高比率運用 課題あり 有利
VSG:仮想同期発電機)・(VOC:仮想発振器制御)の概略図

主な用途

グリッドフォーミングインバータ(GFM)は、主にエネルギー貯蔵システムと組み合わせる形で、以下の分野で導入・実証が進んでいます。

  • バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)
  • マイクログリッド・離島電力網
  • データセンターのバックアップ電源
  • EV(電気自動車)の充電インフラ
  • 大規模再生可能エネルギー発電所(ウィンドファーム、メガソーラー)

開発・評価に必要な試験環境

グリッドフォーミングインバータやBESSの開発では、系統の様々な変動や過酷な条件を模擬できる試験環境が必要不可欠となります。

例えば、
  • バッテリーの挙動を再現する「バッテリー模擬試験」
  • PCS(パワーコンディショナ)の基本性能・効率を測定する「PCS評価試験」
  • 系統の周波数乱れに対する応答を見る「周波数応答試験」
  • 急激な負荷変化に対応する「電力変動試験」
  • 各種グリッドコードへの適合を確認する「系統安定化制御評価」
などが挙げられます。

これらの試験・評価現場では、高精度な出力を再現するDC電源、エネルギーを無駄にしない回生型DC電源、双方向での電力制御が可能な大容量双方向DC電源などが重要な役割を果たしています。

まとめ

グリッドフォーミングインバータは、再生可能エネルギーの大量導入が進む次世代電力系統において、安定供給を支えるコア技術です。
今後、BESS(蓄電池システム)やマイクログリッドの普及とともに、その重要性はさらに高まっていくと考えられています。

関連ワード:
  • グリッドフォーミングインバータ
  • グリッドフォローイングインバータ
  • バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)
  • マイクログリッド
  • 仮想同期発電機(VSG)
  • 再生可能エネルギー系統連系