技術コラム

クリーンルームの清浄度を維持する運用方法

私たちが生活する空間には、塵埃(じんあい)とよばれるたくさんのホコリや細菌が浮遊しています。人やモノ、空気が動けばホコリは出るものですが、たとえそのような浮遊物があっても、通常の生活においてはあまり大きな問題になりません。

しかし、精密機械や半導体などの繊細な製品や医薬品の製造現場、また、手術室のような高い衛生基準が求められる場所では、空気中に舞うわずかなホコリや細菌が大きな問題につながります。

そのため、通常の空間とは異なり、ホコリや細菌が浮遊していない空気のきれいな空間が必要になります。その際に使われるのがクリーンルームやクリーンブースです。

クリーンルームやクリーンブースがあるべき機能を発揮するためには、ハード面とソフト面、両面からの維持が欠かせません。

ハード面の機能を維持するためには、クリーンルームを構成する機器や装置の管理とメンテナンスが必要です。クリーンルームは内部に清浄な空気を送り込むための機器やルームの気密性を維持する装置のほか、入り口のエアシャワーやホコリ取り用の足踏みマットなど、多くの設備によって運用されます。

これらの設備に異常があればクリーンルーム内に浮遊物が持ち込まれてしまい、清浄度を保てなくなってしまいます。そのため、ハード面のメンテナンスが必要です。

ソフト面では、クリーンルーム内で働く人やモノについての管理を行います。人が動けば衣類からホコリが発生したり、髪の毛やフケ、汗による塩分や油分の飛沫が発生したりします。

たとえば、人の髪の毛は1日に100~200本程度抜けるといわれています。クリーンルームに8時間滞在すれば、一人あたり30本から60本近い髪の毛が落ちる計算です。また、一般的な綿の衣服でも、作業により着衣から微粒子が発生します。

クリーンルームの清浄度を管理するためには、下記の4原則を遵守します。

クリーンルーム管理の4原則

  • ゴミを発生させない
  • ゴミを持ち込まない
  • 堆積させない
  • 発生したら、速やかに除去する

また雑巾やティッシュ、ノートやメモ用紙のようなアイテムは微粒子の発生源になるため、クリーンルーム内には持ち込んではいけません。クリーンペーパーや電子メモなど、専用の用品を使います。

クリーンルームメンテナンス方法

クリーンルームのメンテナンスは、主にハード面に対して行われます。クリーンルームには、HEPA(ヘパ)フィルタやULPA(ウルパ)フィルタを通した清浄な空気が常に供給されています。

そのため、空気を供給する空調機やフィルタなどに異常がないか、フィルタが汚れていないかなどの点検を行います。また定期的にフィルタを交換したり、空調機に異常があれば修理を行ったりします。

さらに、機器の異常を察知するためには、クリーンルーム内の観察や監視など、モニタリングも欠かせません。その方法の一つが、ルーム内の空気中の微粒子の数を測定し、清浄度をチェックする方法です。そのために、クリーンルームライトやパーティクルカウンターを利用します。

クリーンルームライトはポラリオンライトともよばれる、懐中電灯やペンライトに近い形状の手持ちのライトです。特殊な光により、机や床の上、壁やカーテンに付着した粒子のほか、空気中を浮遊している粒子を浮かび上がらせます。クリーンルーム内のどのような場所にホコリなどの微粒子が存在、堆積しているかを確認するために使用します。

小型PLクリーンルームライト

一方、パーティクルカウンターは、名前の通り、空気中の浮遊物(パーティクル)の数を数える測定器です。ハンディータイプや、机上タイプがあり、用途と目的によって使い分けられます。

パーティクルカウンタ

クリーンルームライトやパーティクルカウンターは、シーズシー株式会社や株式会社佐藤商事、近藤工業株式会社などが取り扱っています。

また、火災や地震などへの対策も重要です。クリーンルーム内で火災が発生すると、装置に被害があるだけでなく、煙や灰などにより大量の塵埃が発生し、クリーンルームを汚染してしまいます。

そのため復旧には金銭的にも時間的にも多くのコストを要します。機器のメンテナンスを定期的に行うとともに、ヒューズやブレーカーなどの安全対策もしっかり行いましょう。

地震への対策としては装置や機器の転倒防止などが必要です。特にクリーンブースではブース自体の倒壊を防ぐ必要があります。クリーンルーム内では、塵埃の発生を防ぐために床への加工が制限されるケースもあります。

クリーンルームに対応したアジャスターなどを用いて耐震対策を行うといいでしょう。またUPSなどのバックアップ電源の確保も大切です。

クリーンルーム・クリーンブースの管理方法

クリーンルームの管理は、主に人やモノの動きといったソフト面に対して行われます。その代表がクリーンルーム管理の4原則です。それぞれについて解説します。

ゴミを発生させない
 常に清浄な空気が供給されているクリーンルームですが、ルーム内で働く人の作業により、微粒子が発生してしまいます。発生する微粒子をできるだけ少なくするため、作業者は衣類からホコリが発生したり、髪の毛が落ちたりしないようにクリーンルームウェアや専用の帽子、マスクや手袋のほか、専用のシューズを着用します。作業の内容によってはゴーグルを着用することもあります。
また作業者の汗などから発生する微粒子を防ぐため、クリーンルーム内は常に快適な温度になるように調整します。
ゴミを持ち込まない
 クリーンルーム内で作業を行うためには、作業者が出入りしたり、材料や機材を持ち込んだりする必要があります。クリーンルーム内の清浄度を保つためには、このようなときにもできるだけ微粒子を持ち込まないことが重要です。
そのためには、クリーンルーム内の気圧を外部よりも高くし(陽圧)、人やモノの出入りの際に、浮遊物の多い外の空気が入ってこないようにしています。また、人やモノがクリーンルーム内に入る際にはエアシャワーや粘着クリーナーなどを用いて、付着している粒子を取り除くようにします。
堆積させない
 堆積した微粒子は、新たな浮遊物の発生源になります。ホコリが積もった場所に息を吹きかけるとホコリが舞い上がるのと同じ理由です。そのためクリーンルームでは、内部で発生した微粒子が堆積しない工夫が必要です。
たとえば樹脂の床を帯電防止素材にしたり、ホコリが下に落ちるクレーチングの床にしたりします。また、床と壁の合わせ目を曲面形状で埋めたりするなどの工夫をします。
発生したら、速やかに除去する
 作業の内容によっては微粒子の発生を抑えるのが困難な場合もあります。そのような場合には排気場所の近くで作業するなど、発生した微粒子が速やかに排除される仕組みが必要です。そのほかにも定期的に清掃を行う、ゴミを小まめに外に出すなどの管理を行います。清掃の際にはクリーンルーム用の掃除機や雑巾などを使用します。

クリーンルームの清浄度クラス

クリーンルームの清浄度は1立方メートルの空気に含まれる空中の塵埃数で決められます。塵埃数はパーティクルカウンターによって測定でき、クラスが判定できます。清浄度のクラスと適用される用途は次のようになります。

クラス3~5 プリント基板
クラス5~6 計測機器、ベアリング、時計、カメラ、レンズ
クラス5~8 薬品、冷凍食品、食品の包装
クラス8 印刷、手術室、加工食品

また清浄度のクラスとそれに求められる空気中の塵埃数は下記の表の通りです。

クラス 最大空中塵埃数/立方メートル 米国209E
≥0.1µm ≥0.2µm ≥0.3µm ≥0.5µm ≥1µm ≥5µm 基準相当値
1 10
2 100 23.7 10.2
3 1,000 237 102 35 クラス1
4 10,000 2,370 1,020 352 83 クラス10
5 100,000 23,700 10,200 3,520 832 クラス100
6 1.0×106 237,000 102,000 35,200 8,320 293 クラス1,000
7 352,000 83,200 2,930 クラス10,000
8 3,520,000 832,000 29,300 クラス100,000
9 35,200,000 8,320,000 293,000 室内クラス