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技術コラム

パーティクルカウンター(微粒子計測器)入門

パーティクルカウンター(微粒子計測器)とは?

パーティクルカウンターとは、空気中や水中に浮遊する塵埃(じんあい)や不純物などの微粒子の数を測定するための機械で、微粒子計測器ともよばれます。

パーティクルカウンターの機械の中に空気や水の流れを作り、そこにレーザーを当てることで微粒子にレーザーが当たったときの散乱光を測定し、粒の大きさと量を測定する仕組みです。

たとえば、私たちが普段生活している空気は一見きれいに見えますが、ホコリやカビの胞子など、目には見えにくい大きさの不純物をたくさん含んでいます。

部屋の隅や棚の上などにいつの間にかホコリが積もっていたり、飾られていた鏡餅にカビが生えたりするのはそのためです。

このような不純物は日常生活で大きな問題にはなりませんが、精密機械や半導体、医療機器や薬品の製造現場では、製品の不良の原因になります。そこで使用されるのがクリーンルームやクリーンブースです。

クリーンルームやクリーンブースには、HEPA(ヘパ)フィルタやULPA(ウルパ)フィルタといった高性能なフィルタを通した清浄な空気が常に送り込まれ、塵埃や不純物の少ない、特別な空間を作り出します。

クリーンルーム内部の空気の「きれいさ」の評価項目の一つに、浮遊微粒子濃度試験(清浄度)があります。これはJIS B 9920の「クリーンルーム及び関連する制御環境 第1部:浮遊粒子数濃度による空気清浄度の分類」に詳細が定められています。

そのため、クリーンルームの性能評価には空気中の不純物の測定が欠かせません。パーティクルカウンターは、このようなクリーンルームやクリーンブースの中で空間の「きれいさ」の評価を行うために使用されています。

さらにJIS B 9921「光散乱式気中粒子計数器」では、パーティクルカウンターを用いた試験方法や、使用するパーティクルカウンターの仕様も決められています。

パーティクルとは?

パーティクルとは、一般的には小片や粒子のような微少な物体のことを呼びます。コンピューターグラフィックでは、水しぶきなどを表現する粒状のオブジェクトを指すこともありますが、半導体製造などクリーンルームを使用する環境においては、空気中の塵埃や不純物などの微粒子を意味しています。

パーティクルの種類や発生原因は数多く、身のまわりで発生しやすいパーティクルには、衣類などから出るホコリや、作業者の身体から脱落した髪の毛や皮膚の微少なかけらが挙げられます。ほかにもタバコの煙や油煙、花粉などもパーティクルになります。

また、パーティクルの中でも種類によって大きさはさまざまで、たとえば髪の毛ならば50μmから100μmほどですが、油煙は0.01μmから1μm前後になります。また、大気汚染物質のひとつであるPM2.5は粒子の直径が2.5μm以下のものを意味します。

ちなみに、PM2.5を測定できる空気清浄機の動作センサーには、パーティクルカウンターと同じレーザー光の仕組みが使われています。パーティクルカウンターと似た仕組みとして、掃除機の「ゴミ検知センサー」もありますが、こちらは赤外線センサーが主に使われています。

パーティクルの種類とサイズ(測定範囲)

一般的なクリーンルームでは、内部に送り込む空気をHEPAフィルタで清浄にしています。HEPAフィルタの性能は、JISにより「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有する」と定められていて、おおよその大気中粗大粒子やカビ、髪の毛や花粉などを防ぐことが可能です。

HEPAフィルタよりも高い清浄度が必要な場合にはULPAフィルタを使用します。ULPAフィルタの性能は、「定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもつ」と定められています。そのためHEPAフィルタでは取り除けなかった大気中微小粒子の一部やバクテリアなども取り除けます。

パーティクルカウンターの選び方

前述のとおり、クリーンルームやクリーンブース内の清浄度の評価にはパーティクルカウンターが必要です。評価に使用するパーティクルカウンターの規格は、吸引流量や計測粒径区分によって分けられており、測定しようとする空間が求める清浄度から、適応するモデルを選びます。

パーティクルカウンターを選ぶポイントは下記の4つです。

1.吸引流量、粒子径区分、測定対象の清浄度が目的に合っているか
パーティクルカウンターは、モデルによって吸引流量と測定できる粒子の径の種類、対象とする空間の清浄度が決まっています。
メーカーやモデルによってこれらの条件の組み合わせに違いがあります。まず測定対象の清浄度をチェックし、その後に粒子径区分などの条件を確認します。
2.測定する粒子数は、ある程度多いほうがいい
適合するクラスに続いて大切なのが、計測粒径区分と吸引流量です。クリーンルーム内の清浄度の計測は、内部の空気全てを吸引して行うわけではありません。ルーム内の一部の空気をサンプルとして吸引し、測定しています。
空気中の微粒子に限った話ではありませんが、サンプルから統計的に全体の数値を予測するには、できる限り多くのサンプルを用意するほど精度が高くなります。つまり、パーティクルカウンターにおいては、できるだけ多くの粒子を数えれば精度が高くなると言えます。
吸引流量がある程度大きなカウンターを選ぶか、それが不可能な場合には長い時間をかけて測定するとよいでしょう。
3.吸引する空気中の粒子数が多すぎると誤差が大きくなる
たとえば、目の前のコンベアーで1つずつ製品が運ばれてくれば、その製品の数を数えるのは難しくはありません。しかし一度に10個以上の製品が流れ続けると、数を数えるのは難しいでしょう。
パーティクルカウンターも同じで、吸引する空気の中に含まれるパーティクルの数が限度を超えて多くなると、正確な測定ができなくなります。
吸引流量に対して測定できる微粒子の数は「最大可測粒子濃度」によって表されます。対象とする空間の粒子数が多く、最大可測粒子濃度を超える場合には、流量を下げ、測定時間を長くしましょう。
4.必要以上に小さな微粒子を数えようとすると誤差が大きくなる
清浄度の管理(クラス)では、粒子の大きさごとに上限の濃度が定められています。そして粒子が細かくなればなるほど、より多くの粒子の浮遊が許されています。
たとえば半導体製造を行うclass5のクリーンルームでは、0.5μmの粒子の数は1立方メートルあたり29個までしか存在を許されていませんが、0.1μmの粒子は10万個まで許されています。
このような空間の清浄度測定に最小可測粒径0.1μmのパーティクルカウンターを使用すると、大量の0.1μmの粒子を測定することになってしまい、誤差が大きくなってしまいます。クリーンルームの仕様より小さな粒径のカウンターは選ばないようにしましょう。

実際にパーティクルカウンターを選ぶ場合は、

  • クリーンルームのクラスを決める(1~4、4~8、7~9)
  • 流量の少ないハンドヘルドタイプか、大きなベンチトップタイプかを決める

といった視点から判断します。さらに使用環境により、自動計測や定点観測、ネットワーク接続、モニタリングソフトウェアなどの必要性も検討するとよいでしょう。