技術コラム

■直流安定化電源とは?

直流安定化電源とは、一般的なコンセントの電源から安定した直流電流を作り出し、供給する装置です。電子機器を動かすための電源や、電子機器のチェックなどに使用されます。

例えば、日本の家庭用のコンセントでは100Vの交流で提供されていますが、電力を供給する途中の損失や、同じ電源に接続された機器の電力消費量の変化などにより、実際には微細な電圧変動が発生しています。

供給される電圧が変動しても、掃除機や扇風機のように比較的簡単な構造の家電製品であれば、あまり問題にはなりません。しかし、電子機器のような精密な機器では、わずかな電圧の変化が誤作動などを引き起こしてしまいます。

また、電子機器を動かすためには直流電流が必要になるため、供給されている交流電流を直流電流に変換しなければいけません。このようなときに使用されるのが直流安定化電源です。

直流安定化電源は、出力の方法によって定電圧電源と定電流電源の2つの方式に分けられます。定電圧電源では、電源負荷が変化しても出力電圧が一定になるような制御が行われます。一方、定電流電源では出力電流が一定になるような制御が行われます。

定電圧電源と定電流電源の詳細はこちらのページで解説しています。

定電圧電源と定電流電源はどう違う? 基本原理を理解しよう

■直流安定化電源を選定するときのポイント

直流安定化電源を選定する際には、主に出力範囲と回路方式の2つの点に注目します。

出力範囲

直流安定化電源の出力範囲は、単一レンジ方式かワイドレンジ方式かで大きく変わります。

単一レンジ(シングルレンジ)電源とは、出力できる電圧と電源の組み合わせが、定格電圧と定格電流によって決定される電源です。定格電圧が80V、定格電流が10Aの直流安定化電源(PK80-10(800W))であれば、最大出力電圧80V、最大出力電流10Aで消費電力800Wが最大の出力になります。

一方、ワイドレンジ(オートレンジ)電源とは、出力できる電圧と電源の組み合わせが、定格電圧と定格電流に加え、消費電力によって決定される電源です。

定格電圧が80V、定格電流が50A、消費電力が800Wの安定化電源(PKT80-50(800W))の場合、最大出力電圧の80Vで出力できる電流は、消費電力が800W以下となる10Aまでとなります。同様に最大出力電流の50Aで出力できる電圧は16Vまでとなり、シングルレンジ方式のように最大出力電圧と最大出力電流の組み合わせでの使用はできません。

出力範囲 シングルとワイドの比較

同じ消費電力で選ぶのであれば、シングルレンジ電源のほうが安価です。いつも決まった電流、電圧での試験を行うのであれば、シングルレンジ電源を選ぶと良いでしょう。

ただし、モーターのように起動時のみ大きな電流が必要な電子機器や、消耗すると出力電圧が降下するバッテリーを電源にしている電子機器のチェックを行う場合には、さまざまな電圧と電流の組み合わせが必要になります。そのため、シングルレンジ電源で対応しようとすると、たくさんの電源が必要です。

また、そのような広い範囲を全てカバーするシングルレンジ電源を用意すると価格も上がり、電源の大きさも大きくなってしまいます。このような際にはワイドレンジ電源を選べば、コストもスペースも抑えることが可能です。ワイドレンジ出力が可能な電源にも出力できる範囲の広いものと狭いものがあります。上の例で示したものは、5倍のワイドレンジ出力が可能なモデルです。ワイドレンジ力の電源を選ぶ際は、必ずレンジ幅の確認をしましょう。

古くはシングルレンジ電源が主流でした。しかし近年では、バッテリーで動く機器が増えたり、使用する電子機器の種類が増えたりしたため、ワイドレンジ電源の需要も伸びています。

回路方式

直流安定化電源の回路にはドロッパ方式とスイッチング方式の2つの種類があります。

ドロッパ方式はシリーズ方式やリニア方式、シリーズレギュレータ方式、リニアレギュレータ方式、シリーズドロッパ方式などとも呼ばれ、入力された交流電流を直流に変換した後、トランスによって電圧や電流を制御して送り出します。一方のスイッチング方式では、直流に変換された電流をコイルや半導体などを用いて高周波の交流電流に変換し、再び直流に変換して電圧や電流を制御します。

スイッチング方式の直流安定化電源は、その仕組みから微細なノイズが発生するのがデメリットです。そのためノイズの影響を受けやすい機器には向きません。一方でドロッパ方式はノイズが少なく負荷の変化に対する応答性が高いのが利点です。しかし大きくて重い点や、熱を多く発生させるというデメリットも持ち合わせています。

一般的なパソコンにもスイッチング方式の直流安定化電源が内蔵されていますが、もしこれをドロッパ方式にしようとすると、トースター程の大きさの電源が必要です。そのため、近年ではスイッチング方式の直流安定化電源が主流になっています。

直流安定化電源を選定する際には、まずは動作に必要な電圧と電流を確認して出力範囲を決定し、その後ノイズの影響や応答性の確認、機器の操作性などをチェックし、用途に合わせて規格を選ぶようにしましょう。

■直流安定化電源買い換えの目安

近年になってワイドレンジ電源が広く使用されているように、直流安定化電源の性能や機能は日々進歩しています。

そのため、現在使用している直流安定化電源で特に問題がなかったとしても、次のような点がある場合には、新しい電源を検討してみる価値があります。

  • 大きいので設置に広い場所が必要
  • 重いので移動させづらい
  • 効率が悪く、消費電力が大きい
  • 発熱が多く、冷却ファンの音がうるさい
  • メーターがなかったりアナログメーターであるため、数値の読み取りに時間がかかったりする
  • リモート制御できない
  • アナログ制御で設定や調整に時間がかかる

大きさや重さ、効率や発熱の問題は、ドロッパ方式の電源をスイッチング方式に変更すれば解決されます。また近年ではメーターやリモート制御など、ユーザーインターフェイスが劇的に向上しており、誰にでも使いやすい電源に変化しています。そのため電源が古くなってきたと感じる場合には、新しい電源を選定しても良いかもしれません。

直流安定化電源の買い替えの目安とメリット

■直流安定化電源使用上の注意

では、直流安定化電源を使用する上で、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。基本的に直流安定化電源がドロッパ方式、スイッチング方式のどちらであっても、使用する際は放熱の確保が重要です。ホコリの多い場所での使用も電源の寿命を縮める原因になります。

また、使用時のトラブルには、状況に応じてそれぞれのポイントを確認します。

初回通電時にうまく立ち上がらないときは、過電流保護が働いている可能性があります。この場合は直流安定化電源の容量を見直します。負荷側の始動時に流れる突入電流を考慮した電源の容量を再検討するといいでしょう。

入力ブレーカーが作動したり、外付けヒューズが断線したりしたときは、突入電流が影響している可能性があります。一般に直流安定化電源の突入電流は通電時に通常時の数倍から数十倍流れます。各直流安定化電源の突入電流とブレーカーやヒューズの仕様を再確認しましょう。

確認してもトラブルが解消されない場合には、メーカーのサポート窓口に連絡をします。直流安定化電源をはじめ、電源に関する機器は、それが壊れてしまうと他の機器が動かせなくなるという重大な問題につながります。対応が早く、きめ細やかなサポートをしてくれるメーカーの製品を選ぶと安心です。