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技術コラム

(掲載:, 更新:, M.P.

バイポーラ電源とは、1台でプラス(+)とマイナス(−)両極性の電圧・電流を、ゼロを境にスムーズに出力できる電源のことです。「バイポーラ(Bipolar)」は「双極の」という意味を持ち、その名の通り出力の極性を自在に切り替えることができます。

一般的な直流電源(単極性電源)が、電圧・電流を供給する「ソース(Source)」機能しか持たないのに対し、バイポーラ電源は供給する「ソース」機能に加え、電流を吸い込む「シンク(Sink)」機能も備えています。これにより、4象限(Four-quadrant)動作が可能となり、一台で直流安定化電源、交流電源、電子負荷、"アンプ(増幅器)"の4つの役割を果たすことができます。この汎用性の高さが、バイポーラ電源が評価・試験から研究開発まで幅広い分野で活用される理由です。

アンプのゲイン(利得)の回路図です。

四象限出力

上図は、±10Vの電圧が±10kVの電圧になる、すなわち入力された電圧を1,000倍に増幅して出力(高圧増幅)することができるアンプ(Amplifier、増幅器)を表しています。アンプは基本的に出力電流のシンク(吸い込み)機能があり、容量性負荷や誘導性負荷およびこれらの複合した負荷であっても定電圧動作が可能です。しかも高速に応答しますので、まさに理想的な電源と言えます。
松定プレシジョンの高圧アンプは、片極性タイプは二象限出力(PタイプはⅠ・Ⅳ、NタイプはⅡ・Ⅲエリア)、バイポーラ出力タイプでは四象限(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳエリア)フルに出力可能です。また、全ての製品でリニアアンプ方式を採用し、高速応答を極限まで追求しています。

四象限出力イメージ図です。

Vo max 定格出力電圧
Io max 定格出力電流

四象限出力イメージ図です。

スルーレート

HAPシリーズHEOPSシリーズ・HEOPTシリーズHJOPSシリーズHOPSシリーズでは、応答性をスルーレート(Slew Rate、SR)で規定しています。従ってステップ応答は図のようになります。

スルーレートは単位時間当たりの電圧変化量でSR=△V/μsと表わされ、出力振幅が小さい場合には応答時間は短くなります。 HAPシリーズは最高でSR=700V/μs以上、 HAPSシリーズは最速SR=1200V/μs以上を達成している超高速電源です。

スルーレート(入力信号に対する出力電圧の単位時間あたりの変化量)です。

応答速度

HEOPシリーズHOPPシリーズの応答性については周波数帯域で規定しています。定格抵抗負荷にて出力を正弦波でフルスイングさせた場合、入力周波数が速くなるとアンプが追従できず出力振幅が減少していきます。出力振幅が70%(=-3dB)になる周波数fcを以って応答速度としています。

正確な出力波形を必要とされる場合には、使用周波数よりも十分に高い周波数帯域をもつ高圧アンプを選択してください。
通常、正弦波で使用する場合では3~5倍、矩形波で使用する場合では10倍くらい速い周波数帯域が必要です。周波数帯域が不足しますと、出力振幅が減少するだけでなく入出力位相差が大きくなりますので、出力波形をモニタして使用するなどの注意が必要になります。

応答速度(周波数帯域にて規定)です。

立上がり時間

(ステップ応答)…応答性を立上り時間で表現することもあります。
一般的に応答速度(=周波数帯域)fc(Hz)のアンプの立上り時間はtr≒0.35/fcで求められます。
立下り時間tfはtrと同じです。

立ち上がり時間イメージです。

容量性負荷や放電を伴う負荷について

100pF以上の容量負荷(出力ワイヤの浮遊容量も含めて)の場合、出力振動を起こす場合があります。その場合、出力に100Ω(0.1μF時)~1000Ω(1000pF時)の高圧抵抗をシリーズに挿入してください。また、容量負荷では右の式により周波数帯域が制限されますので注意してください。
また、コロナ放電などの放電を伴う用途では、アンプの定格を超える過大な電流が流れ、故障の原因となる場合があります。
これらの用途でご使用になる場合も、アンプを保護するため、必ず出力に保護抵抗を直列に接続し、電流を制限してください。これにより、製品の長寿命化も期待できます。

※高電圧アンプの出力振幅が低下するような高周波での連続使用は避けてください。内部損失が増加し、故障の原因となります。

容量性負荷持続時の周波数帯域です。

高速・高圧アンプの性能をフルに生かすには・・・

高電圧アンプの出力ケーブルは、ノンシールドケーブルをご使用下さい。出力波形が、正弦波や矩形波などの場合、出力ケーブルが金属物との間に浮遊容量を持ち充放電電流となって余分な電流が流れることになります。
この電流は、漏れ電流となり負荷と並列に流れるため、
(1)スルーレートや応答速度が低下する。(2)出力波形が歪む。といった現象につながります。

HVアンプの漏れ電流 概念図