技術コラム

取り扱いには十分な注意が必要とされる高圧電源
「ちゃんと扱っているからウチは大丈夫だろう」
「今まで問題なく使えているから大丈夫なんじゃないかな」
…でも、ついおろそかにしてしまっていることや見落としてしまっていることはありませんか?
高圧電源専門メーカー・松定プレシジョンが高圧電源の「正しい」使い方をご紹介します。

高圧電源の正しい使い方 その1

放電させないために

通常は絶縁物であっても、印加する電圧が高くなるにつれて様々な放電現象を起こしやすくなります。
そのため、高電圧を扱う場合は、安全のために耐電圧を確保することが非常に重要です。
耐電圧は、絶縁物の沿面距離および絶縁距離と電極の形状によって決定されます。

沿面距離 : 充電部を保持する場合の絶縁物表面上における距離を指します。
絶縁距離 : 充電部を完全に絶縁物で覆う場合の絶縁物の厚みを指します。

湿度や汚れなどによって耐電圧は低下し、高電圧になるほど放電やリークが発生しやすくなります。
使用する電圧に対して適切な絶縁材を選び、長期にわたって絶縁性が維持できるようにしてください。
以下に様々な絶縁方法について解説します。

空気絶縁
充電部が大気中に露出する場合、乾燥した条件下では500V/mm程度の絶縁性があります。ただし、湿度や埃、塩分、有害ガスなどにより絶縁性が低下するため、その対策が必要となります。
  • 3kV程度までは空気中やプリント基板上でも引き回すことが可能です。
    ただし、湿度が低く埃のない環境以外には適しません。
  • 6kV以上では、充電部にハンダ等の尖りがあるとコロナが発生しやすくなります。
    充電部は必ず尖りのないようにしてください。
  • 10kV以上になるとさらにコロナが発生しやすくなります。
    電極形状は丸くし、充電部は絶縁物で完全に覆うことをお薦めします。
  • 30kV以上では放電しやすくなるため、コロナリングなどの電界低減対策が必要です。
ガス絶縁
SF6ガスが代表的です。絶縁耐力が高く、ガス温度が1800Kまでは化学的に安定です。耐圧はおよそ2kVmax/mmです。
液体絶縁
絶縁油と呼ばれる石油系、シリコン系オイル、フッ素系などがあります。
固体絶縁
使用する電圧が3kV以下の場合、ほとんどの樹脂材料(ただし絶縁抵抗が高いもの)が使用できます。10kV以上では特に高絶縁材料のご使用をお薦めします。
※ベークやフェノール材はリークが大きいのでご注意ください。
※ポッティングする場合はエポキシやシリコン樹脂がよく使用されます。1液型や2液混合型があり、高耐圧なので絶縁距離を短くすることが可能です。

高圧電源の正しい使い方 その2

高圧出力ケーブルの処理方法

あるものに高電圧を印加しようとするときの接続方法はいろいろな方法がありますがここでは高圧ケーブルの処理方法の一例と注意事項をご紹介します。

<直接ハンダ付けする場合>

人体への放電を避けるためにも、高電圧になるものは十分な絶縁耐力をもった絶縁物で覆うか、他の場所へ放電しないようにグランド電位のもので覆うようにしましょう。

<高圧線同士を接続する場合>

高圧線同士を接続して高電圧を長く引っぱる場合は、接続部だけに上記のような処理をすることは困難なので、絶縁耐力のある熱収縮チューブなどで接続部を覆い、チューブを収縮させるようにしましょう。その際、 チューブの絶縁耐圧に十分な余裕がないと、チューブの絶縁破壊を起こす恐れがあります。チューブ1枚では絶縁耐圧が不足する場合は、2重、3重にして耐圧を確保してください。 また、ハンダに”とがり”があると、チューブの絶縁耐圧に十分な余裕があっても耐圧破壊を起こす恐れがあるので、ハンダは丸く仕上げるようにしましょう。

高圧電源の正しい使い方 その3

特にご注意頂きたいこと

高電圧を取り扱う際は、安全に関する注意事項を遵守していただかないと、感電したり、最悪の場合には、死亡事故にもつながりかねません。特に下記の注意事項は必ずお守りください。

<必ず接地する!!>

人体への放電を避けるためにも、高電圧になるものは十分な絶縁耐力をもった絶縁物で覆うか、他の場所へ放電しないようにグランド電位のもので覆うようにしましょう。

<高圧部に触れない!!>

感電事故を避けるため、操作する際は高圧出力部や高圧端子に触れないでください。通常運転中および試運転中は、非常に高い電圧が端子に加わっており、触れると死亡事故につながりかねません。

<高圧部を露出させない!!>

電圧が300V以上になると、直接電極に触れなくても放電によって感電する危険があります。電極などの高圧部は十分な絶縁耐圧をもった絶縁物で覆うか、グランド電位の導電物で覆い、直接触れることができないような処置を施してください。

<危険に対する認識を共有する!!>

万が一の感電事故が発生した時のためにも、高圧電源の操作を熟知し、適切な応急処置を行える方が近くにいない場合は、高圧電源に触れないでください。また、使い慣れていない方に高圧電源を操作させる時は、触れると危険な場所などの注意事項をあらかじめ説明して、危険性を十分理解して頂いた上で操作させるようにしてください。

<操作は右手で行う!!>

万が一感電しても電流が体の重要な器官を流れる危険を減らすために、高圧電源は右手で操作し、左手は高圧電源あるいはその他の機器類から離すようにしてください。

<触れる前に電源を切る!!>

高圧部に触れる前には必ず電源を切ってください。もしくは、電源を切ってあることを確認してください。出力部にはコンデンサがあり、電源を切ってすぐに触れるのは大変危険ですので、これらのコンデンサの電荷に注意しながらすべてアースに接続して放電させてください。

<ケーブルの帯電に注意する!!>

出力シールドケーブルにチャージされたエネルギーは接地することで放電されますが、その接地を取り去るとチャージが完全に抜けきらない時や、しばらくしてチャージが回復してくる時があります。出力ケーブルに触れるときは必ず完全にチャージを取り去ってください。

ショートさせて完全に電荷を抜きます。

<周りにも注意を促す!!>

危険区域に人が立ち入ったり、不用意に高圧部に触れたりしないようにするために、危険区域を明確に指定し、「高圧危険」などの注意を促す表示をしてください。また、高電圧を発生している時は、警報ランプや警報音で警告を発してください。

感電

感電は「電撃」ともいわれ、人体の一部を通して電流が流れることです。感電の程度は人体を流れる電流の値や、電流の流れる経路に関係があります。軽いものはピリピリと感じる程度ですが、やけどをしたり、呼吸障害や心臓機能の障害が生じたり、最悪の場合には命を落とすこともあります。

人間の皮膚の抵抗は、電圧が100Vの時、乾燥時で約5kΩ。湿潤時は約2kΩ。体の抵抗は約300Ωです。皮膚が湿っている時に100Vに触れると、人体に約22mAの電流が流れ、自力では離脱できなくなります。特にぬれた手での作業が厳禁なのはそのためです。

電流値 人体に現れる影響
1mA 感じる程度
5mA 相当の痛みを感じる
10mA 耐えられないほど苦しい
20mA 筋肉の収縮が激しく、自力で回路から離脱できなくなる
50mA 相当危険である
100mA 致命的な結果を招く

これらの数値はごく概念的なもので、電源の容量が極めて小さいため、あるいは回路のインピーダンス(抵抗のようなもの)が大きいため、微弱な電流しか流れない場合は危険が小さくなります。高電圧になればなるほど、直接電極に触れなくても、空気の絶縁を破壊して放電し、感電する危険が高くなります。次に示した荷電部分に対する安全距離をとり、これらの電荷部へ接近しないように注意する必要があります。

荷電部分の電圧 [kV] 3 6 10 20 30 60 100 140 270
安全距離 [cm] 15 15 20 30 45 75 115 160 300

感電時の応急処置

救助

被害者を、電流が流れている導体からすぐに離してください。その際、電流が流れている導体にも 被害者の体にも触れないようにし、巻き添え感電に注意してください。すぐに高圧電源を切って回路をアースに落としてください。高圧電源が切れない場合は回路をアースするか、もしくは取っ手が乾いた木製の斧などで入出力ケーブルを切ってください。その際、電気火花が出ないように十分注意してください。 回路を切ることも、アースすることもできない場合は、乾いた板や衣類といった絶縁物を使って被害者を救助してください。大至急、救急車を呼んでください。

症状

感電ショックの症状を死亡と混同しないでください。感電ショックの症状は、ひどいやけどだけでなく、意識不明や呼 吸停止、脈拍停止、そう白、硬直などを含みます。

手当て

被害者が正しく呼吸していない場合は、直ちにその場で人工呼吸をはじめてください。なお事故現場にいる被 害者や救助者の命が危ない場合に限り、被害者を近くの安全な場所に移してください。1.人工呼吸をはじめたら、被害者が自分で呼吸を開始するまで、もしくは被害者を医療機関へ引き継ぐまで、規則 正しく人工呼吸を続けてください。2.人工呼吸をする人が交代する場合は人工呼吸のリズムを乱さないようにしてください。 応急手当を行う一方、感電事故では身体の内部にやけどをしていることがあり、放っておくと重大な結果につながりかねませんので、一刻も早く医師の診断を受けてください。

万が一の処置方法を紹介しましたが、事故を防止することこそが最善の対応であることは言うまでもありません。くれぐれも感電事故が発生しないよう、高電圧の危険性を理解して、高圧電源を安全に正しくお使い下さい。