異物検査とその検査方法
X線を利用した非破壊検査では、様々な検査を行う事ができますが、その中でも広く使われているのは混入した異物を発見する検査です。異物検査の手順や特徴を、ここでは製造工程を例として見ていきましょう。
例えば食品は人間の口に入れるものを製造しているため、安全が最優先です。当然のことながら全数検査を行う必要があります。食品安全基準のHACCPではB(微生物)、C(化学物質)、P(異物)をどの様に防ぐかを定義するよう求められています。この中のPは、Physicalの頭文字で、金属やプラスチック、ガラスなどの破片、石や木の欠片など物理的危害のある異物のことです。これを非破壊検査で行うためには、刃物の刃などは金属探知機で発見することも可能ですが、プラスチックなど磁気に反応しないものは赤外線またはX線検査にて発見するしかありません。
もちろん、食品以外の製造工程でもX線による非破壊検査は使われています。金属のケースや缶に入ったものはX線でなければ検査できませんし、石などは金属探知機にも反応しませんので、これらを発見するにはX線による検査が必要です。
食品に限らず、赤外線での検査は「フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)」を利用して行います。赤外線を試料に照射し、吸収される波長をフーリエ解析によって同定することで、異物を検出します。この場合、画像として異物を検出するわけではなく、あくまでも赤外線の吸収線によって同定しているという点に注意が必要です。例えば、アルコールや水の吸収を見つけることができます。これらはペットボトルなどに入った液体の同定などに使用できます。空港での手荷物検査にも応用が可能です。
一方、上記以外のある程度大きさを持ったものであれば、エネルギー分散型X線分析装置を利用します。これによる撮像で、混入の可能性のある異物と形状が類似しているものを探し出し、チェックを行います。金属片や骨片、植物繊維の硬い部分などはデータベース化されていれば、撮影された画像とマッチングさせることによって、自動的に混入を判別可能です。
食品でない場合も、異物検査の方法は同様です。画像からの発見を非破壊検査で行うのであれば、使い勝手が良いのはマイクロフォーカスX線CTを利用することでしょう。X線が透過しにくいものであれば中性子線を利用する方法もありますが、設備が大がかりになります。
いずれにせよ、透過画像を取得し、それを画像処理した上で正常な透過画像と比較することで、異物の混入や欠損などの異常を発見できるようになります。
画像処理の基本
さて、これらの検査を行うためには、取得した画像そのままを利用せず、必要な情報を得やすいように画像を処理する必要があります。
まず、使われるのは「二値化」です。これは画像の輝度を利用します。しきい値を決め、輝度がそれよりも高い部分は白(輝度が最も高い、256階調であれば255)に、それよりも低い部分は黒(輝度が最も低い、全ての階調で0)に分けます。二値化を行う事により、領域の分割や抽出を行う事ができます。領域抽出の結果、本来の想定と異なる場合は、その部分が欠損していることが分かります。
二値化の応用例として「輪郭抽出」があります。二値化されているわけですから、対象となる物体が黒になっている場合、白の部分との境目に当たるピクセルをなぞっていく形で取得します。手順を示すと次のようになります。
- 画像の左上からラスタスキャンを行い、輝度が0のピクセル座標を発見する。
- 辺のピクセルに左下から反時計回りに番号を振る。
- リモートプログラミング表示:電圧/電流のリモート制御中に点灯します。
- 輝度が0のピクセルの中で、最も数字の低い座標を特定する。
この処理を行う事で、検査対象物の大きさ、形そして個数が分かるようになります。
また、二値化されていないグレースケール画像の場合は「エッジ検出」という処理を行います。輪郭検出と異なるのは、エッジ部分は「輝度が急激に変化する部分」という考えを取っていることだけです。つまり「輪郭検出」では輝度が0の座標を探しましたが、「エッジ検出」では輝度の変化度が大きい(輝度変化の微分値が大きい)座標を特定し、同様のことを行います。
このエッジ補正を行うために、「階調補正」を行う事があります。これは「ヒストグラム均等化」や「ガンマ補正(γ補正)」があります。コントラストを上げたいときには「ヒストグラム均等化」が、明るさを調整したい場合は「ガンマ補正」が使われます。
これまでは1枚の画像を使っての画像処理でしたが、2枚以上の画像を利用した処理もあります。これらは「画像間演算」と呼ばれています。加算・減算・乗算・比・重ね合わせなど、様々な処理があります。
1枚の画像だとコントラストが低い、または何らかの理由で十分な解像度が出ていない場合は「加算」や「重ね合わせ」を使い、より鮮明な画像を得られるように処理します。ノイズの低減にもつながります。
「減算」の例だと、例えば目的の部分以外の情報を落とすことができます。下図右の画像では、基板の部分が減算により全て0に置き換わっており、BGA、素子だけがグレーとして残り、情報を保持しています。
最後に紹介するのは「疑似カラー」です。例えば赤外線カメラでの写真を考えてみます。下の写真は通常の写真(左)を赤外線で撮影したモノクロ写真(中央)です。赤外線がより多く出ている部分の輝度が高くなっています。しかし、そのままだと温度の高い部分がわかりにくいため、輝度によって色を変えます(右)。例えば温度の高い部分は白、黄、赤とし、温度の低い部分は青や紫とします。すると、温度の高い部分と低い部分が、よりわかりやすくなります。これを疑似カラー写真と呼びます。
このように画像処理は、そこからどのような情報を得たいのか、どのように情報を見せたいのかによって様々な処理を組み合わせて行います。組み合わせることで、例えばBGA内のボイドを検出する、といったことも可能になります。
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