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技術コラム

双方向電源の仕組み

まずは双方向電源とはどういうものなのか、説明しましょう。何らかの電源系統に対して、直流と交流を双方向に変換できるコンバータを併せ持つものを双方向電源と呼びます。内部には双方向のDC/DCコンバータと、同じく双方向のAC/DCコンバータの両方を搭載することで、直流・交流の双方に対応しています。

双方向電源の仕組み

この双方向電源部分を回路図として表すと、次のような図になります。

回路図

このような仕組みで商用電力源と双方向にエネルギーのやりとりができるようになるのです。この出力につないだ被試験物との間の構成回路は「回生電源」と呼ばれます。

回生電源の回路は大きく分けると3つの部分に分けられます。図の左側から説明すると、まずは「①双方向AC/DCコンバータ」があります。これは商用電源(交流)と内部の直流電流とを双方向に変換し、エネルギーのやりとりができる回路です。
商用電源から直流に変換された電気は、「②双方向DC/DCコンバータ」を通して、一次側のDCと二次側のDCを絶縁しつつ、双方向にエネルギーをやりとりできます。絶縁トランスとも呼ばれます。
そして最後に「③昇降圧DC/DCコンバータ」で、電圧の変換が行われます。特に二次側は可変電圧とすることで、様々な試験に使える様になるのです。

双方向電源の利用のメリット

この双方向電源ですが、さらに高度化させる開発が行われています。特に小型電子機器の種類が増えたこともあり、テスト時には蓄電池の電圧変化によってどのような影響が出るのか、逆に影響を出さないようにするためにどの様な回路設計が必要なのかを詳細に調べる必要があります。
特に、電池は「出力電流が大きいほど電圧が低下する」「フル充電時とローバッテリー時では電気特性が異なる」「新品と劣化品では電気特性が異なる」といった特徴があります。一般家庭において、電子機器で利用される電池がどの様な状態かがわからない以上、様々なパターンでのテストを行う必要がありますが、その状態の電池を数多く準備するのは大変です。

そこで双方向電源をバッテリーシミュレータとして活用するのです。シミュレータとして利用する直流電源は、一般的にはプログラマブル電源として市販されています。これを更に高度化し、双方向電源のプログラマブル電源化が現在進んでいます。

双方向電源の利用のメリット

高電圧を達成できる双方向電源は、EV用の大電流コンバータ試験などに使用されています。特に力行と回生が繰り返されるコンバータの試験では、切り替え時のクロスポイントでのノッチや、電流波形のオーバーシュートやアンダーシュートが発生しないスムーズな電流切替を実現できます。当然、バッテリーを利用することによって生じる過充電や過放電、充電池の劣化を気にせず、繰り返し試験を行う事ができます。回生電源はCV/CC電源や、CV/CV電源として利用することもできます。

回生電源の使い方

系統に接続されている機器で電圧変化が起こりうる場合、系統がそれに耐えうるかをテストするには、いきなり実際の機器を取り付けるのではなく、電圧変化をエミュレーションするものを取り付けて実験を行うのが最適です。
逆に機器がどれだけの電圧変化にまで対応できるのかを調べるのにも役に立ちます。一定の電力が供給されている、1次電池と同様の場合は通常の電源に接続すれば良いのですが、2次電池に接続して使用する機器ですと、電池の種類によって電圧変化の様子が異なります。双方向電源を上手く活用すれば、リチウムイオン蓄電池や鉛蓄電池など、様々な電圧かつ電圧変化をする蓄電池を再現できるため、12Vの車載用バッテリーから、EV用の高電圧まで、再現可能です。

回生電源の使い方

実際の電池は、電池自体が古くなって回復が不可能な恒久劣化と、低温で性能が低下する一時的な劣化があります。ですから電池の充電率(SOC: state of charge)はこの2つの要因による健全度(SOH: state of health)による影響を受けます。恒久劣化をSOH1とし、一時劣化をSOH2とすると、SOH=SOH1×SOH2で表されます。また、1-SOHを劣化度(SOD: state of deterioration)と呼びます。
回生電源では、このSODをシミュレートする設定を行う事で、劣化したバッテリーを繋いだ際に電子機器がどの様な挙動を示すのかを試験することができます。これは「電池モデルに基づくSOC推定技術」として活用されています。

また、モバイル機器のような低電圧の電子機器での試験にも使えます。先に述べたように、一般家庭における電池がどの様な状態なのかは事前にわかりませんので、回生電源を使うことで新品の状態だけでなく、劣化してしまった電池の状態や、容量切れに近い電圧低下状態なども再現することができます。そのため、定常状態のみならず、異常状態での電子機器の動作テストや、誤作動防止機能のテストを繰り返し行う事ができるようになります。

リチウムイオン電池のV-I
V-I

一方、電子機器以外でも活用することができます。例えば車載機器としてでは「マイルドハイブリッド」を採用したハイブリッドカーがそうです。特にヨーロッパで提唱されている「48Vマイルドハイブリッド」規格のハイブリッドカーの場合、減速エネルギー回生システムや、強化された発電機を使って駆動の補助をしようとしています。
車載の発電機は通常12Vで、これで車載の電装品の電力を賄っているのですが、この電圧ではハイブリッド用としては低すぎるため、48V発電機に置き換えています。とは言いえ、車載の電子機器自体はこれまでと同様に12Vで動作をしますから、電圧変換が必要となります。これらの変換に双方向DC/DCコンバータなどを搭載した双方向電源を搭載しています。さらに付け加えますと、このシステムで上手くハイブリッドカーとして動作するのかのシミュレーションを行う事も可能です。その他にも、インバーターシミュレータや、モーターシミュレータでは電力回生機能をもつ装置があり電気自動車の開発などで活用されています。

もちろんこの技術は系統連携の話でもありますから、双方向電源は系統連携の部分でも用いることができます。それについては次回、紹介する予定です。

参考文献