技術コラム

インバータとはどんな技術

インバータとは?

インバータ回路とインバータ装置

インバータとは、基本的には直流電流を交流電流に変換する回路(インバータ回路)そのものを指す言葉ですが、特にエアコンや洗濯機などの家電分野では「インバータ装置」を指すケースもあります。

インバータ装置の恩恵を受けているのは、家電だけではありません。エレベータの揚げ降ろしや工場のコンベアーが急加速や急停止しないようになっているのは、モーターの加速がうまく調整されているためです。モーターの速度調整にはインバータ装置が役立っています。

インバータ装置とは、どんな技術なのでしょうか? エアコンを例にしてみましょう。インバータの搭載されていないエアコンは、冷えすぎると運転を休止し、暑くなると運転を再開させるしかありません。室内の温度が安定せず、電力消費が多くなるなど、とても効率が悪いものです。

一方で、インバータが搭載されたエアコンは、冷房を運転開始時に高速でモーターを回してファンを回転させ、設定温度に近づいたらファンを低速にして緩やかな変化を付けて運転を継続させます。結果、ONとOFFしかないエアコンよりもムダな動きが減らせて省エネでの運転が可能になります。

家電分野でインバータという単語が頻繁に出てくるのは、そのためです。また、近年増えているIH調理器具でもインバータ装置は活躍しています。IH調理器具では20kHz~90kHzという非常に高い周波数の交流電流を使用します。これもインバータ装置により周波数を変えることで利用できるようになっています。

用途に合わせてモーターの回転速度や加速度を柔軟に変えることができる機能は、大変便利なものです。では、なぜインバータ装置はモーターの回転速度を柔軟に変えられるのでしょうか。

周波数と回転数

インバータ装置は、コンセントからの交流電流を任意の周波数や電圧に変更する目的で多く使われます。

コンセントから供給される電圧と周波数は、東日本なら100V、50Hz、西日本なら100v、60Hzと決められており、モーターの回転数は周波数によって決まるため、コンセントとモーターを直接つなぐだけでは、回転数を連続的に変化させられないのです。

そこでインバータ装置を用いて周波数を変えることによってモーターの回転数を変化させます。

インバータ装置の構成

インバータ装置の構成

インバータ装置はどのようにして周波数を変えているのでしょうか? インバータ装置は、交流電流を直流電流に変換する「コンバータ回路」と「コンデンサ」、そして「インバータ回路」の3つの要素で構成されています。

まず、コンバータ回路で交流を直流に変換し、コンデンサに充電や放電を繰り返しながら安定した直流に整えます。次に、インバータ回路で直流を任意の周波数や電圧で交流に変えて出力にします。

インバータ回路の原理

では、インバータ回路の動作の原理について、下図のように4つスイッチを組み合わせた回路図を元に解説します。インバータ回路は直流を交流に変換します。

回路に直流電源を接続して、負荷に対してスイッチ①と④がONの状態の時に②と③がOFF、①と④がOFFなら②と③がONと、対になるように一定周期で繰り返すと、負荷に流れる電流の方向が切り替わってプラスとマイナスの電圧で出力され、交流電流を作りだします。この技術が「スイッチング技術」です。

なお、スイッチング技術を用いた回路は、交流を直流に変換することもできます。電圧が正方向のときはスイッチ①と④を閉じ、電圧が負方向のときはスイッチ②とスイッチ③を閉じると、負荷に対しては常に同じ方向に電流が流れます。

インバータ回路の原理
図①:インバータ回路の原理

インバータ回路とスマートグリッド

現在、ITの発達とIoTの普及により、より効率よく電力供給と消費を行う「スマートグリッド」の構想が持ち上がっています。スマートグリッドとは、ITによりリアルタイムの消費電力を把握し、その近くに集中的な送電を行うことで、より効率的に送電できる構想です。

スマートグリットを可能にするためには、電気自動車や太陽電池などの最新の技術が必要になります。ここでもインバータ回路はさらなる貢献が期待されています。

電気自動車は車に搭載されたバッテリーの電気を使ってモーターを動かして走ります。しかしバッテリーから得られる電気は直流電流ですので、モーターを効率よく動かすためには交流電流に変換する必要があります。このときにインバータが使用されます。

メガソーラーも同様です。太陽電池から作られる電気は直流電流ですので、一般的に使用されている電気と同じ周波数、電圧に整えて送り出します。

メガソーラー

スイッチング電源の原理

スイッチを高速に動作させ、制御することで電力を自在に出力できるインバータの原理は、コンバータの省エネルギー化や小型化にも利用されています。スイッチを使って電力を変換するコンバータのことを、「スイッチング電源」と呼んでいます。

電子機器には、電圧変動の少ない安定化した直流が必要です。以前は、家庭用の交流電力を低電圧にして直流に変換するために、リニア電源と呼ばれるタイプの「ACアダプタ」が使われていました。ゲーム機やノートパソコンのアダプタがわかりやすいでしょう。

リニア電源は、入ってきた電気についてまずトランスを介して電圧を下げます。その後シリコンダイオードの回路を通し、交互に流れていた電気を片方だけに変える整流が行われ、コンデンサにより平滑化されて電子機器の回路へと向かっていました。

このトランスに大きな鉄心が使われるため、従来のACアダプタは大きく重たかったのです。

従来のACアダプタ

これを大きく変えたのがスイッチング回路を用いたコンバータです。スイッチング回路を使用したコンバータでは始めに電圧を下げるのではなく、スイッチング回路を通します。

スイッチング回路で交流電流の向きを整え、その後に電圧変換を行います。しかし一般には整流された電気ではトランスによる電圧変換ができません。

そこで半導体素子を通し、一定した電圧が断続的に流れるパルス波に変換します。これにより疑似的な交流電流のようになり、トランスにより電圧変換が行えるようになります。またこのときの周波数は数10kHz~数100kHzと高周波になるため、トランスの大きさが小さくて済む利点があります。これにより、小型で軽いコンバータが実現されました。

インバータの最新技術

インバータの最新動向として、パワーデバイスが注目されています。パワーデバイスとは、半導体を素材としてつくられた回路素子のカテゴリのひとつで、インバータやコンバータの半導体として電力を供給することができます。スイッチングを行えるパワーデバイスには、パワートランジスタやサイリスタがあります。

パワーデバイスの特徴として、電流容量や耐電圧が大きいこと、発熱が少なく放熱が良いことなどが挙げられる一方で、電力を流した際に一部が熱として逃げるなどの電力損失が発生してしまいます。最近では改良により損失が低減したものの、物理的に改善が見込みにくいとも言われています。

そこで、半導体の素材として現在利用されている「シリコン」よりも、電気を通しやすく、電力損失が発生しにくい新素材でのパワーデバイス開発が進められ、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ガリウム(ガリウムナイトライド)が注目を集めています。

まだ製造費が高いなどの問題は多いものの、より複雑かつ高機能な回路の構築と共に、インバータの活用範囲はより広がっていくでしょう。

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