技術コラム

単位の接頭語

仕様書を書く際には様々な単位の数値を書くことが多いと思います。ですが、桁数の多い数での場合、カンマ区切りでは読みにくくなってしまいます。その際に使用するのが接頭語です。日本国内では「SI接頭語」、国際的には「SI接頭辞」などとも呼ばれます。
文字通りSI単位系で使用され、3桁毎に変わっていきます。有名なものには1000倍を意味するキロ(k)や、100万倍を意味するメガ(M)があります。逆に小さい方では1000分の1を意味するミリ(m)などがあります。次の表に一覧を示しておきましょう。

表:SI接頭語一覧

記号 読み方 乗数 倍率 制定年
Y ヨタ(yotta) 1024 1𥝱 1991年
Z ゼタ(zetta) 1021 10垓 1991年
E エクサ(exa) 1018 100京 1975年
P ペタ(peta) 1015 1000兆 1975年
T テラ(tera) 1012 1兆 1960年
G ギガ(giga) 109 10億 1960年
M メガ(mega) 106 100万 1960年
k キロ(kilo) 103 1000 1960年
h ヘクト(hecto) 102 100 1960年
da デカ(deca) 101 10 1960年
100 1
dc デシ(deci) 10-1 1/10 1960年
c センチ(centi) 10-2 1/100 1960年
m ミリ(milli) 10-3 1/1000 1960年
μ マイクロ(micro) 10-6 1/100万 1960年
n ナノ(nano) 10-9 1/10億 1960年
p ピコ(pico) 10-12 1/1兆 1960年
f フェムト(femto) 10-15 1/1000兆 1964年
a アト(atto) 10-18 1/100京 1964年
z ゼプト(zepto) 10-21 1/10垓 1991年
y ヨクト(yocto) 10-24 1/1𥝱 1991年

仕様書にSI単位系で記載する場合には、基本的にこれらのSI接頭語を利用して単位を書いていきます。そして制定年を見ていただくと分かるように、接頭語は新たに追加されていきます。実際、コンピュータ関係の分野では「エクサバイト」という単位が使われるような分野がありますし、数年後には「ゼタバイト」が頻繁に登場するものと考えられています。

ちなみにコンピュータ関係ではこれらの接頭語はSI接頭語と意味が異なります。例えばキロバイトは1000バイトではなく、1,024(210)バイトを示しますし、メガバイトは1,048,576(220)バイトを意味しています。コンピュータ関係は10の乗数ではなく、2の乗数で書かれているのです。

SI単位系とその他の単位系

ここまでSI接頭語の説明をしてきましたが、そもそもこれは(一部コンピュータ関係で利用されることはありますが)SI単位系で利用されるものです。
SI単位系は長さをメートル(m)、重さをキログラム(kg)、時間を秒(s)として定義しています。もちろんこれらは力学で使用する単位ですので、電池など電磁気学分野での単位は他に設定されています。
ちなみにほとんどの単位は人工物などに依存しないよう、2019年までに新しい定義に変更されています。

長さ:メートル(m)

元々は地球の子午線全周長を4万kmとして定義していましたが、現在は真空中の光速度cの数値を正確に299,792,458m / sと定めることによって設定されています。
メートルという言葉は、古代ギリシャ語の「μέτρον καθολικόν(メトロン・カトリコン)」に由来しています。これはイタリアの科学者ティト・リビオ・ブラッティーニが「普遍的測定単位」という意味の「metro cattolico」という言葉を作る元になっていました。

重量:グラム(g)

質量の単位としてキログラム(kg)があり、それの1/1000の量として定義されました。この質量はキログラム原器の質量を規準としていましたが、2019年にプランク定数を規準とする定義に変更されました。それによると、プランク定数を
h=6.62606957×10-34 J s
とし、周波数が{(299,792,458)2 / 6.62606957}×1034 Hzの光子のエネルギーに等価な質量を1kgとしています。これはアインシュタインの特殊相対性理論から出てくるE=mc2を利用しています。
ちなみにグラムという言葉は重力(Gravity)からgrave(グラーブ)という質量を表す単位を作成し、その1/1000をgramme(グラム)としたのに由来しています。

時間:秒(s)

もともとは1日の長さの1/86400を1sとして定義していました。現在では、セシウム 133 の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間として定義されています。

周波数または振動数:ヘルツ(Hz)

波の周波数として使われるHzは、時間(s)の逆数として定義されています。Hz= s-1です。以前には「サイクル毎秒(c/s)」という単位が使用されていた時代もありました。
ヘルツという言葉は電磁気学の分野で貢献したドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツ(Heinrich Rudolf Hertz)に由来しています。

電流:アンペア(A)

1秒間に1C(クーロン)の電荷を流す電流を1Aとしています。式で書くと1A=1C / sです。
アンペアという言葉は電流と磁界との関係を示した「アンペールの法則」で知られているフランスの物理学者、アンドレ=マリ・アンペール(André-Marie Ampère)に由来しています。

電圧:ボルト(V)

導体の二点間を1Cの電荷を運ぶのに1Jの仕事が必要となるとき、その2点間の電圧を1Vとしています。式で書くとV = J / Cです。
ボルトという言葉は「ボルタの電池」で知られているイタリアの物理学者、アレッサンドロ・ボルタ(Il Conte Alessandro Giuseppe Antonio Anastasio Volta)に由来しています。

電気抵抗:オーム(Ω)

1Vの電圧をかけたときに1Aの電圧が流れる電気抵抗を1Ωとしています。式で書くとΩ=V / Aです。
オームという言葉は、電気抵抗に関する「オームの法則」を発見したドイツの物理学者、ゲオルク・ジーモン・オーム(Georg Simon Ohm)に由来しています。

静電容量:ファラドまたはファラッド(F)

コンデンサなどで使われる単位で、1F「1Cの電気量を充電したときに1Vの直流の電圧を生ずる2導体間の静電容量」として定義されています。言い換えれば、「1Fは1Vの電位差で1Cの電荷を充電できる静電容量」であるということです。F=A・s / Vと書くことができます。
ファラドという言葉は、電磁気学や電気化学に功績のあったイギリスの物理学者、化学者のマイケル・ファラデー(Michael Faraday)に由来しています。

インダクタンス:ヘンリー(H)

インダクタンスの単位である1Hは、「1秒間に1Aの割合で変化する直流の電流が流れるときに1Vの起電力を生ずる閉回路(コイルなど)のインダクタンス」として定義されています。H=V・s / Aです。
またヘンリーという言葉はアメリカの物理学者ジョセフ・ヘンリー(Joseph Henry)に由来しています。ヘンリーは、ファラデーとほぼ同時期に、独立に電磁誘導を発見しました。

基本的にはこれらSI単位系を使用して記載することになります。ですが、他の単位系を使っている国・地域や業界もあります。
例えば天文学ではcgs単位系(cm, g, sで表す単位系)を一部で使っていますし、アメリカやイギリスでは現在でもヤードポンド法を使用しています。
cgs単位系の名残はあちこちにあり、例えば天気予報で利用される気圧の単位はヘクトパスカル(100Pa)を規準として使用していますが、これは昔cgs単位系のミリバール(mb)を使っていたときと同じ数値になるようにしたものです。
一方、ヤードポンド法では長さはインチ(1inch=約2.54cm)、フィート(1foot=12inch=約30.5cm)、ヤード(1yd=3feet=約91.4cm)を使用しています。質量はポンドで、以前は国によって若干異なっていましたが、1958年に統一され、現在では1ポンドは0.45359237kgです。

表:ヤードポンド法の換算表

単位 SI単位系
インチ(inch) 長さ 2.54cm
フィート(foot, 複数形でfeet) 長さ 1foot=12inch 30.48cm
ヤード(yd) 長さ 1yd=3feet 91.44cm
ポンド(£) 質量 0.45359237kg

このヤードポンド法とSI単位系が混在するとトラブルの元になります。実際に1999年には火星探査機マーズ・クライメイト・オービターの火星軌道投入失敗という事故が起こりました。これは探査機を製作したロッキード・マーチン社では必要なエンジン噴射の推力を計算する際にヤードポンド法で計算していましたが、運用していたジェット推進研究所(JPL)は、それをSI単位系だと勘違いしていたために発生しました。単位系をどちらかに統一するか、しっかりと単位まで書くことが重要だということがわかります。

その他の単位、表記

その他の単位として、まずは化学、特に有機化学の分野で出てくる接頭語があります。これらは原子の数を表すのに用いられる接頭語です。もともとはギリシャ語で、数を表す言葉でした。下に一覧化しておきます。

表:化学での接頭語

数字 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
接頭語 モノ  ジ   トリ  テトラ ペンタ ヘキサ ヘプタ オクタ ノナ  デカ 

例えば近年、ポリトリメチレンオキシドを電解質とする電池の技術が開発されていますが、これはメチル基3つが酸素と結びついたトリメチレンオキシド(オキセタン)が重合化したものです。「トリ」が3を表すというのが分かると思います。

その他、単位として目にするのは通貨の表記でしょうか。日本円は「¥」、アメリカドルは「$」、ユーロは「€」で表されます。
ドルについては各国のドルがありますので、アメリカドルは「米ドル」、オーストラリアドルは「豪ドル」など、と表記されることもあります。また、中国の人民元も「¥」を使いますので、日本円と混同しないよう注意が必要です。

おまけとして、もう一つ小ネタを。上で「メガバイトは1,048,576(220)バイト」と書きました。この際に3桁ずつ「, (カンマ)」で区切りました。日本国内では簿記なども含め、このような表記をよく見ますが、実はこの書き方には国によって違いがあります。
アメリカやイギリス、中国、韓国は日本と同じ表記をします。例えば小数点まで含めると「1,234,567.89」のように表記します。小数点は「.(ピリオド)」で、整数は3桁毎に「,」区切りです。
ですが、西欧各国ではピリオドとカンマの使い方が逆になり、「1.234.567,89」と表記するのです。また、南米各国もスペインやポルトガルの影響からか、同様の表記を行います。
北欧や東欧、ロシアはまた少し異なります。「1 234 567,89」と、小数点がカンマなのは西欧と同じなのですが、3桁の区切りには半角スペースを使います。
さらにスイスやスイスと国境を接する付近では「1'234'567.89」と、小数点はピリオドですが、3桁区切りには「' (アポストロフィ)」を使います。

いずれにせよ、区切りに使用する文字は日本のものが世界共通ではないことを頭に入れておきましょう。特に通貨で使う場合はカンマ、ピリオドの間違いで大変な損害につながっりますので、相手がどの単位を使い、どの区切りを使っているかは、確認取ってから取引をする必要があります。

参考文献

  • ポリトリメチレンオキシド及びポリトリメチレンオキシドを電解質として含む電池
    https://jstore.jst.go.jp/nationalPatentDetail.html?pat_id=28164