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技術コラム

EV用モーターの種類

欧米や中国が国家の後押しもあって進めている自動車のEVシフト。日本でもトヨタや日産、三菱自動車などが中心になって、電気自動車(EV)の開発が急ピッチで進んでいます。すでに日産がリーフなどを市場に投入しているのは、皆さんもご存じだと思います。

さて、このEVはガソリンエンジンの代わりにバッテリーとモーターで動いています。このモーターが、メーカーによって異なるのです。
まずは、そもそもモーターにはどの様な種類があるのかを紹介しましょう。モーターは大きく分けると、直流電源で動作する「直流モーター」と、交流電源で動作する「交流モーター」があります。
直流モーターはさらに「ブラシモーター」と「ステッピングモーター」に分けられます。一方、交流モーターには「ブラシレスモーター」があります。これらのモーターは、電流を流すと回転する「ローター(回転子)」と、ローターを回転させるための「ステーター(固定子)」でできています。これを踏まえて、先に挙げたそれぞれのモーターの特徴を紹介しましょう。

まずはブラシモーターです。ブラシモーターはローターにコイル(電磁石)を、ステーターに永久磁石を利用しています。ローターが回転すれば自動的に磁界が変化しますので、電流を流してさえいれば半永久的に回転を続けます。その構造が単純なため、コストが安くつきます。欠点としては電源と接している整流子の部分にブラシが必要となり、摩擦による騒音の発生と、ブラシの摩耗が挙げられます。

これはブラシモーターの構造です。

一方、ステッピングモーターはブラシモーターと異なり、ローターに永久磁石を、ステーターに電磁石を使います。ステーターに複数の電磁石を配置し、どれか一つだけスイッチをオンにします。

ローターの磁極と反応しローターは電磁石に近づきますので、その瞬間、電磁石をオフにし、回転する方向の一つ先の電磁石をオンにします。これを繰り返すことでローターの回転を維持し、回転速度を制御します。ただし、なめらかな制御を行うには、数多くの電磁石が必要になりますし、その切り替え制御が大変になります。

ステッピングモーターの構造です。詳細は上記のとおりです。

これらの欠点を克服し、EVで利用されているのがブラシレスモーターです。三相交流電源で動作し、ブラシモーターとは逆に、ローターは永久磁石、ステーターが電磁石です。

この場合、ブラシが必要ありませんので、騒音もブラシの摩耗も発生しませんし、電磁石の制御も(少しは)楽にできますが、三相交流電源で動作するステーター側を制御する仕掛けが必要になります。特にローターの回転速度に合わせて交流電流を流す必要があるため、ローターがどれくらいの角度回転しているのかを検出する「回転位置センサー」が必要です。またEVの場合はアクセルの踏み込み方によっても交流電流の流し方を制御する必要がありますので、アクセルポジションセンサーも必要です。これらのセンサーからの値をベースにECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)が、回転速度、トルクなどが適切になるよう、周波数や電流量を調整します。

ブラシレスモーターの構造です。

また、駆動電圧が高い方がトルクは高くなり、ローターの回転速度も速くなります。各自動車メーカーは起動電圧を高くする方向で開発を続けています。

グラフ:駆動電圧とトルク・ローターの回転速度の関係です。

EV用電源に求められる要件とは

では、EVのモーター用の電源に求められる要素には、どの様なものがあるのでしょうか。大きく分けて4つあると言われています。それらは電圧、電気容量、特性、安全性です。まずは電圧です。EV用の電池のセルはリチウムイオン蓄電池が主流ですが、これは1セルで3.6Vしかありません。通常はこれを4つ直並列で繋ぎ、7.2Vにしたものを1モジュールとしています。

ここからはメーカーによって異なりますが、これらのモジュールを複数繋げて、280V、360Vなどにして利用します。例えば日産のリーフでは、ネオジム系永久磁石埋め込み式3相交流同期モーター「EM61型」を駆動電圧345Vで動作させています。
次に電気容量です。これが大きければ航続距離が伸びますので、重要な要素です。リーフの2017年10月モデルでは40kWhで、EPA航続距離は241kmとされています。
海外勢では、BMWのi3が33kWhでEPA航続距離が182km、電気自動車の雄であるテスラ・モーターズのモデルSは、最も小さいもので60kWh、最大のもので100kWhのバッテリーを搭載しています。また、モデルSは充電可能電圧も110、220、440Vに対応しています。

メーカー 車種 タイプ EV走行
(JC08)
EV走行
(EPA)
バッテリー
容量
急速充電
BMW i3(94Ah) BEV 390km 182km 33kWh
ホンダ フィットEV
(2016年3月終了)
BEV 225km 131km 20kWh
三菱自動車 i-MiEV X BEV 180km 99km 16kWh
三菱自動車 i-MiEV M BEV 120km 66km
(未公表)
10.5kWh
日産 新型リーフ(40kWh) BEV 400km 241km 40kWh
日産 旧型リーフ(30kWh) BEV 280km 171km 30kWh
テスラ モデル S 75 BEV (未公表) 398.4km 75kWh
テスラ モデル S P100D BEV (未公表) 504km 100kWh
テスラ モデル X 75D BEV (未公表) 380.8km 75kWh
テスラ モデル X P100D BEV (未公表) 462.4km 100kWh
フォルクスワーゲン e-ゴルフ BEV 301km 201km 35.8kWh

しかし、これらはあくまでもリチウムイオン蓄電池であり、電気特性も受け継いでいます。充放電によって温度が上がりますし、70度を超えると出力電圧が低下します。逆に-30度を下回ると内部抵抗が増加します。

安全性にも問題があります。電解液を使っているために液漏れが起きる可能性があります。走行中に発生すると問題になるため、モジュールは液漏れ対策が不可欠です。しかも、自動車は衝突時の安全性も求められるため、衝突時でも液漏れしないレベルが必要となり、重量とコストがかさむ結果となります。

また、家庭用の100Vと比較すると大変な高電圧ですので、漏電などの対策も必要です。ガソリン自動車に搭載されているバッテリーは12Vですから、比較にならないことはよくわかると思います。高電圧を必要とするモーターをはじめ、EVは高電圧が必要なものから低電圧で動作するものまで様々な電圧の部品の集まりです。安全性テストも様々な電圧に対応した電源で行う必要があるのです。

参考文献