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技術コラム

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核融合発電の最前線 3大方式の原理とそれを支える計測・電源技術

太陽が輝き続けるエネルギーの源、それが「核融合」です。地上における核融合発電は、重水素(D)と三重水素(T)を融合させるD-T反応 D + T4He + n + 17.6 MeV を利用し、莫大なエネルギーを取り出す次世代のクリーンエネルギーとして期待されています。長寿命の高レベル放射性廃棄物を大幅に低減でき、燃料が海水中に無尽蔵に存在することから「地上の太陽」とも呼ばれています。

核融合反応を起こすには、燃料を数千万〜1億度級の超高温プラズマ状態にし、一定時間、高密度で閉じ込める必要があります。現在、世界中で様々なアプローチが研究されていますが、本コラムでは代表的な「トカマク型」「ヘリカル型」「レーザー型」の3つの方式について解説します。特に、炉の心臓部であるプラズマのふるまいを正確に把握する「計測方法と計測機器」、そして巨大なシステムを駆動し、計測を裏から支える「電源技術」という、通常はあまりスポットが当たらない極めて重要なコア技術に焦点を当てて深掘りします。

核融合による発電と核分裂による原子力発電の違いは、技術コラム 核融合発電と原子力発電の違いをご覧ください。

方式1:トカマク型核融合発電(磁場閉じ込め核融合)

トカマク型核融合発電の原理

トカマク型は、現在世界で最も大規模に研究開発が進められている「磁場閉じ込め方式」の代表格であり、国際熱核融合実験炉(ITER)でも採用されています。ドーナツ状の真空容器(トーラス)の周囲に配置したコイルに電流を流すことで「トロイダル磁場」を形成します。さらに、プラズマ自体に大電流を流すことで発生する「ポロイダル磁場」を掛け合わせ、らせん状の強力な磁場のカゴを作り出して超高温プラズマを閉じ込めます。

トカマク炉の運転において極めて重要なのが「ダイバータ」と呼ばれる機器です。ダイバータは、核融合反応で生じたヘリウム灰や、炉壁から弾け飛んだ金属不純物を強制排出する「排気口」の役割を担います。磁場を操作して高熱のプラズマを意図的に引き離し、ダイバータ板へと導くことで熱の集中を緩和します。ダイバータは炉内で最も過酷な数千℃級の極限熱負荷の超高温環境に晒されるため、次世代炉では高融点のタングステンがプラズマ対向壁として採用され、内部に冷却水を高速循環させる高度な除熱構造が組み込まれています。

トカマク型核融合発電の計測方法と計測機器

プラズマのポロイダル磁場や電子密度を高精度に測定するためには「ファラデー回転・干渉計システム」が用いられます。プラズマ中を透過する光の位相差や偏光面の回転(ファラデー効果)を検出する仕組みです。 このシステムでは、数百μm帯のサブミリ波を出力する遠赤外線(FIR:Far Infrared)レーザーが使われますが、その媒質ガス 13CH3OH などを光励起(ポンピング)するための光源として、波長10.6μmや9.6μmの大出力・高安定な炭酸ガス(CO2)レーザーが必須となります。電子密度分布などを高精度に逆算するため、発振周波数の異なる2本のFIRレーザーを組み合わせる「ヘテロダイン干渉計(ビート波長計測)」が主流です。

ここにはシビアな技術的課題が存在します。FIRレーザーの分子吸収線は非常に狭いため、CO2レーザーの周波数がわずか数MHz変動するだけで出力が大幅に低下します。そのため、ピエゾ素子を用いた共振器長制御によるポンプオフセット周波数の安定化が不可欠です。また、CO2レーザーとFIRレーザーの共振器が干渉するバックトーク(戻り光)を防ぐため、励起光を意図的に斜め入射させるなどの高度な光学的工夫が施されています。

周辺プラズマを直接測る「ラングミュアプローブ」

プラズマ中心部の計測にはレーザーなどの非接触方式が用いられますが、炉壁に直接触れる周辺部(ダイバータ領域など)の計測には、電極を直接挿入する「ラングミュアプローブ」が広く使われています。

1億度を超える中心部には熱で溶けてしまうため挿入できませんが、炉壁周辺に漏れ出したプラズマの「電子温度」や「電子密度」を測る上では極めて信頼性の高い基本的な診断装置です。前述のマルチグリッド電極(イオンの計測)とラングミュアプローブ(電子の計測)を組み合わせることで、炉壁に流れ込む強烈な熱負荷を正確に予測し、炉の安全性を担保するための重要なデータが取得されています。ここでも、微小な電流を正確に捉えるための高速で低ノイズなバイアス電源が活躍しています。

トカマク型核融合発電の電源

トカマク炉の電源として特筆すべきは、プラズマを強力に加熱し、運転を維持するためのNBI(中性粒子ビーム入射:Neutral Beam Injection)システムの電源です。NBIは、プラスの電荷を持つイオンを加速後に中性化セルに通し、磁場に邪魔されない電気的に中性な高エネルギービームとしてプラズマ中心部へ撃ち込む装置です。非誘導電流を生成し、トカマクの運転を安定化させる役割も担います。

NBIには大きく分けて2種類あります。

  • 正イオンNBI (P-NBI): 加速効率が良く、プラズマの温度上昇を主目的とした比較的低エネルギーの入射に適しています。
  • 負イオンNBI (N-NBI):高エネルギーでの中性化効率が正イオンより高いため、大型トカマクの中心部まで深く到達させることができ、効率的な加熱と電流駆動を実現します。

これらのNBIを駆動するためには、イオンを加速するための数十万ボルトに及ぶ超高電圧かつ大電流の直流加速電源が不可欠です。また、計測用の大出力CO2レーザーを周波数変動なく安定発振させるためにも、極めてノイズの少ない精密な高圧電源技術がプラズマ制御の根幹を裏から支えています。

方式2:ヘリカル型(ステラレータ類似方式)

ヘリカル型核融合発電の原理

ヘリカル型は、日本が世界をリードするもう一つの磁場閉じ込め方式です。自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)の大型ヘリカル装置(LHD)がその代表例です。

トカマク型との最大の違いは「プラズマ自体に電流を流さない」という点です。ヘリカル型では、ドーナツ状の真空容器の周囲に、複雑にねじれた外部コイル(ヘリカルコイル)を配置し、コイルの磁場のみでプラズマを閉じ込める三次元的なカゴを形成します。プラズマ電流を必要としないため、電流の途絶によるプラズマの崩壊(ディスラプション)という致命的な不安定性がなく、極めて長時間の「定常運転」に適しているという大きなアドバンテージを持っています。

ヘリカル型核融合発電の計測方法と計測機器

ヘリカル炉の複雑なプラズマ内部を計測するために「重イオンビームプローブ(HIBP)」が活躍します。これは重イオンビームをプラズマに入射し、プラズマの局所的な電位や揺動を精密に計測するシステムです。

ヘリカル型は磁場構造が複雑なため、ビームがトロイダル方向(ドーナツの周方向)にも大きく三次元的にズレてしまいます。これを解決するのが「八極静電偏向器(オクトポール偏向器)」です。入射ポートでビーム軌道を制御し、さらに検出ポート側にも八極静電偏向器を配置することで、エネルギーアナライザーへの入射角度のズレを相殺する「能動的軌道制御」を行います。ビームエネルギーを固定したままこの偏向器の電圧を高速走査(スイープ)することで、二次元的な電位分布計測への応用が研究されています。

また、プラズマ周辺部(ダイバータやエッジ領域)のプラズマと壁の相互作用を評価するため、「マルチグリッド電極(多重格子プローブ)」が用いられます。プローブ表面に形成される電位差(プラズマシース)を利用し、リペーラー(反発)グリッドに正の電圧をかけ、到達するイオンの I−V 特性の傾きからイオン温度を算出します。閉じ込めから逃げてくる高エネルギーイオンの検出や熱負荷の予測にも不可欠な診断装置です。

ヘリカル型核融合発電の電源

ヘリカル型における高度な計測システムは、高性能な電源技術なしには成立しません。

HIBPにおける八極静電偏向器には、複雑な軌道を三次元的に補正し、かつ二次元プロファイル取得のためにビームを高速でスイープするための、極めて応答性が高く精密な高圧電源が求められます。

さらに、マルチグリッド電極による周辺プラズマ計測では、各グリッドに対して数100Vから±数100Vのバイアス電圧を正確に印加する電源が必要です。強烈な電磁ノイズが飛び交う炉の近傍において、微小なイオン電流の I−V 特性を正確に描くためには、リペーラーグリッドの電圧を高速で走査でき、かつ安定した低ノイズの電源システムが要求されます。これらの電源の信頼性が、プラズマ物理の解明に直結しているのです。

方式3:慣性閉じ込め(レーザー核融合)

レーザー型核融合発電の原理

レーザー型核融合は、磁場ではなく「慣性」を利用してプラズマを閉じ込める方式(慣性閉じ込め方式)です。

直径数ミリの球状のカプセル(燃料ペレット)に重水素と三重水素を封入し、そのカプセルに対して周囲から極めて強力な大出力レーザーを均一に同時照射します。レーザーのエネルギーを受けたカプセル表面は一瞬でプラズマ化して外側へ爆発的に吹き飛びます(アブレーション)。このとき生じる凄まじい反作用により、内部の燃料が中心に向かって超高密度に圧縮されます。この現象を「爆縮(ばくしゅく)」と呼びます。

中心部が超高温・超高密度状態となり、自らの質量による慣性で飛び散るまでのわずかな時間に核融合反応を一気に起こさせます。米国の国立点火施設(NIF)において、投入したレーザーエネルギーを上回る核融合エネルギーを生み出す「点火(エネルギー利得の達成)」が実証され、世界的な注目を集めています。

レーザー型核融合発電の計測方法と計測機器

磁場閉じ込め方式のプラズマが比較的長時間(秒〜分単位)維持されるのに対し、レーザー核融合の爆縮は、ナノ秒(10億分の1秒)からピコ秒(1兆分の1秒)、空間的には数十μmという極限の時空間で進行します。

そのため、計測には全く異なるアプローチが必要です。プラズマの爆縮過程の対称性や挙動をコマ撮りして画像化するための「X線ストリークカメラ」や「X線フレーミングカメラ」といった超高速撮影機器が主力となります。また、核融合反応が起きた証拠となる中性子の発生量や、その速度分布からプラズマのイオン温度を逆算する「中性子飛行時間(TOF)計測器」が用いられます。これらの機器は、レーザーの発振タイミングとジッター(時間的ゆらぎ)なく完全に同期して動作しなければなりません。

レーザー型核融合発電の電源

レーザー型核融合の要は、巨大なレーザーシステムを駆動するための大電力パルス電源技術です。

瞬間的にテラワット(TW:1兆ワット)からペタワット(PW:1,000兆ワット)という途方もないピーク出力のレーザー光を生み出すため、体育館ほどの広大な敷地に並べられた巨大なコンデンサバンクに電気エネルギーを蓄積します。そして、計測された絶好のタイミングでフラッシュランプや半導体励起光源へ一瞬(マイクロ秒オーダー)で大電流放電を行います。

この「エネルギーを蓄え、一気に放出する」というパルス電源・直流高圧電源の技術は、レーザー方式だけのものではありません。例えば、FRC(逆磁場配位)やIEC(慣性静電閉じ込め)といった比較的小型の核融合研究装置のアプローチにおいても、数万から数十万ボルトの静電場形成や瞬間的な大電流放電の実績が多数存在します。核融合分野で培われた極限の電源技術は、方式の垣根を越えて共有され、核融合実用化に向けた最大の推進力となっています。

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