ダブルパルス試験とは、パワー半導体デバイス(SiC MOSFET、IGBT等)のスイッチング動作を評価する手法です。
通常のスイッチング・パルスに続き、短いインターバルで2つ目のパルスを印加し、デバイスの応答時間や過渡特性を調べます。パワーエレクトロニクスに使われるコンバータの変換効率向上の為に、ダブルパルス試験は非常に重要な役割を果たしています。
試験の目的
試験の主な目的は、以下の通りです。
- ターンオンやターンオフ時間などスイッチングパラメータの測定
- スイッチング損失(EON、EOFF)の測定
- ボディダイオードの逆回復特性(リカバリー特性、QRR)の評価
- 電圧・電流のオーバーシュートの観測
- 異なる電圧・電流条件下でのデバイス動作の解析
ダブルパルス試験の準備
ダブルパルス試験を行うには、高圧電源や直流電源のほかに、ファンクションジェネレータなどのパルス発生装置とオシロスコープが必要です。また、誘導負荷や適切なプローブも必要です。
一般的なダブルパルス試験には、試験対象のパワーデバイスを2つ用いたハーフブリッジ回路を用意します。また、ゲートドライバ回路も必要です。
ダブルパルス試験の手順
- ゲートに最初のパルスを印加してインダクタに電流を蓄積する。
- ターンオフ特性を測定するためにデバイスの電源を切る。(EOFFの測定)
- ターンオン特性を測定するために2つ目のパルスを印加する。(EONとQRRの測定)
パルス幅を調整することで、異なる電流レベルでスイッチング特性をテストすることができる。
主な測定値
ダブルパルス試験では、以下のパラメータが測定されます。
- ドレイン・ソース間電圧 (VDS)
- ドレイン電流(ID)
- ゲート・ソース間電圧 (VGS)
波形から、以下のパラメータを測定することができます。
- スイッチング時間(ターンオンとターンオフ)
- スイッチング・エネルギー損失
- dv/dtおよびdi/dtレート
- 逆回復特性
用途
- パワー半導体(SiC、GaNなど)の特性評価
- ゲート駆動回路の最適化
- EMI性能の評価
- シミュレーション用デバイスモデルの検証
ダブルパルステストは、スイッチング動作に関する詳細なパラメータを得ることができ、より効率的で信頼性の高いパワーエレクトロニクス・システムを設計することを可能にします。
ダブルパルス試験の注意点
パワーデバイスの性能を最大限に引き出すためには、ダブルパルス試験を通じて正確にデバイス特性を把握することが重要です。
正確な測定には、適切な評価ボードと測定器、測定環境が必要です。以下の項目に注意して試験を行うことで、アプリケーション開発の効率化と信頼性向上につながります。
正確なテスト結果を得るための考慮事項
- 適切なプローブの使用(ハイサイド測定用の差動プローブなど)
- 測定セットアップにおける寄生インダクタンスの最小化
- 高電流/高電圧試験における熱の影響を考慮
- パラメータの定義については、関連規格(JEDEC、IECなど)を参照
- 関連ワード:
-
- ダブルパルス試験
- パワー半導体
- スイッチング特性
- ターンオン特性
- ターンオフ特性
- 逆回復特性
- リカバリー特性