X線回折(XRD:X-ray Diffraction)は、X線結晶構造解析とも呼ばれ、物質にX線を照射した際に結晶格子で発生する回折現象を利用した分析手法です。
結晶構造は物質ごとに異なるため、X線が回折する散乱角は物質固有のものとなります。この物質ごとに異なる回折パターンを利用することで、主に無機化合物の同定(どのような化合物であるかの特定)や、同一化合物における結晶構造解析、結晶相分析、結晶配向評価、結晶性評価、結晶子サイズ評価、残留応力解析などを行うことができます。XRDは、材料開発、半導体、電子材料、電池材料、金属材料、医薬品、鉱物分析など、幅広い分野で利用されています。
X線回折の原理
X線が結晶格子に入射すると、特定の角度で回折が発生します。回折角は結晶面間隔に依存し、ブラッグの法則によって表されます。
nλ = 2d sinθ
λ:X線波長
d:結晶面間隔
θ:回折角
この回折ピークを測定することで、物質固有の結晶構造を解析できます。

実験室用XRD装置では、Cu(銅)ターゲットを用いた Cu-Kα 線(波長:約1.54Å)が広く利用されています。
用途によっては、Co、Mo、Crなどのターゲットも使用されます。
XRDで分かること
- 結晶相の同定
- 未知試料がどの物質で構成されているかを判別します。
- 結晶構造解析
- 結晶系や格子定数を解析します。
- 配向性評価
- 薄膜や結晶材料の結晶配向を評価します。
- 結晶化度評価
- 結晶化度やアモルファス成分を評価します。
- 結晶子サイズ評価
- 回折ピーク幅から結晶子サイズを推定できます(Scherrer解析など)。
- 残留応力解析
- 回折ピークのシフトから材料内部応力を解析します。
- 結晶欠陥・歪み評価
- ピークの半値幅(FWHM)を解析することで、結晶化度や結晶の歪み、不均一性を評価します。
- 微量成分の検出
- 高出力かつ安定したX線照射により、背景ノイズを抑えた高いS/N比での測定が可能になり、微量な生成相の同定精度が向上します。
X線粉末回折(Powder XRD)
X線粉末回折(Powder XRD)は、粉末状試料に対して行う代表的なXRD測定法です。
粉末試料は結晶方位がランダムになるため、多数の結晶面からの回折を同時に取得できます。そのため、物質同定や結晶相解析に適しています。また、リートベルト解析と組み合わせることで、定量解析や格子定数解析も可能です。
一般的な粉末XRDでは、試料を中心としてX線源と検出器を対称的に回転させる「θ-2θ法(Bragg-Brentano法)」が広く用いられています。
この方式では、試料面に対する入射角θと、検出器側の回折角2θを連動して走査することで、高精度な回折パターンを取得できます。
リートベルト解析では、測定された回折パターン全体を理論計算とフィッティングすることで、結晶構造、格子定数、結晶相割合などを高精度に解析できます。
主な用途
鉱物分析、セラミックス解析、電池材料解析、触媒材料解析、医薬品結晶評価、半導体材料評価
X線応力解析(XRD Stress Analysis)
X線回折は、材料内部の残留応力測定にも利用されます。
結晶に応力が加わると結晶面間隔が変化し、回折ピーク位置が変化します。このピークシフトを解析することで、非破壊で残留応力を測定できます。
主な用途
自動車部品、航空機部品、溶接部、熱処理材、ショットピーニング評価、半導体パッケージ
応力解析では微小なピーク変化を測定するため、X線出力安定性が重要になります。長時間の安定性、低リップル、高い管電流安定度が求められます。
薄膜XRD(Thin Film XRD)
薄膜XRDは、半導体や電子材料などの薄膜評価に利用されるXRD測定法です。
通常のXRDでは測定が難しい薄膜試料に対して、低入射角測定(GIXRD)などを用いて薄膜表面近傍を解析します。数ナノメートルの薄膜を解析する低入射角X線回折(GIXRD)では、背景ノイズ低減が測定精度を大きく左右します。
技術的ポイント:薄膜測定では回折強度が極めて微弱になるため、電源由来のノイズを極限まで抑えることが、微細なピークを検出するための鍵となります。
主な用途
半導体、MEMS、LED、太陽電池、磁性薄膜、圧電材料
in-situ XRD / オペランドXRD
XRDは、加熱・冷却・充放電中などの状態変化をリアルタイム観察する in-situ測定にも利用されています。
特に近年では、全固体電池、Li-ion電池、水素材料、触媒などで重要性が高まっています。
非晶質材料とXRD
XRDは結晶構造解析に優れていますが、ガラスやアモルファス材料など、長距離秩序を持たない非晶質材料では明瞭な回折ピークが得られません。
そのため、アモルファス状態の解析は一般的に難易度が高く、詳細な評価には特別な装置や手法(ハローパターン解析など)を必要とする場合があります。
XRD装置の構成
- X線源
- X線管を用いてX線を発生します。
- 高圧電源
- X線管へ高電圧を供給し、熱電子を加速します。
- フィラメント電源
- 熱電子放出用フィラメントを加熱します。
- 検出器
- 回折X線を検出します。近年では、シンチレーション検出器、半導体検出器、1次元(1D)検出器、2次元(2D)検出器などが利用されており、高速測定や高感度測定が可能になっています。
- ゴニオメータ
- 試料と検出器の角度を制御します。
XRD用電源に求められる性能
XRDでは、回折ピーク位置やピーク強度の安定性が測定精度へ直接影響します。特に高分解能XRDや応力解析では、電源ノイズやドリフトが測定誤差要因となります。そのため、X線源用高圧電源には「超低リップル」「長時間安定性」「高精度管電流制御」「低ノイズ」「高速応答性」「再現性」が強く求められます。特にピーク強度再現性を重視する定量解析では、管電流安定度が測定再現性に大きく影響します。
XRDの分析精度を支える電源パフォーマンス
高分解能なXRD測定や精密なリートベルト解析において、X線出力の変動はピーク分解能低下や解析誤差に直結します。
単色化(モノクロメータ)への対応:特定の波長のみを取り出す分光を行う際、入力となるX線強度が不安定だと、検出器に到達するカウント数が変動し、測定効率が著しく低下します。
長時間安定性とエージング制御:連続したin-situ測定や、X線管の寿命を左右するエージング(慣らし運転)工程において、精密な昇圧制御とドリフトのない安定した出力を提供します。
松定プレシジョンでは、X線回折装置などの分析機器向けに、これらのシビアな要求を満たす超低リップル・高安定な高圧電源やX線管用電源を豊富にラインナップしています。
- X線回折(XRD)
- X線結晶構造解析
- ブラッグの法則
- 結晶方位
- 格子面間隔
- 配向性
- 化学結合
- 無機化合物
- アモルファス
- 非晶質
- 残留応力解析
- X線源
- 高圧電源
関連製品
松定プレシジョンでは、X線結晶構造解析においてX線を発生させるためのX線管用電源を開発・製造しています。
X線管のフィラメント加熱用電源、熱電子を加速させるための高圧電源、およびこれらを省スペースに一体化した複合電源など、分析装置の仕様に合わせて選択いただける豊富なラインナップを取りそろえています。