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用途・事例

AQG324規格は、車載向けパワーモジュールの性能評価に関して包括的な試験方法を提供しています。この規格は、欧州のECPE(European Center for Power Electronics)によって策定され、主に3.5ton以下の自動車に搭載されるパワーエレクトロニクスコンバータユニット(PCU)の特性評価を目的としています。AQG324の正式な名称は、「Automotive Qualification Guideline 324」で、ドイツのLV324に基づいてモジュールテストの特性評価、および自動車用途のパワーエレクトロニクスモジュールの環境テストと寿命テストの共通手順を定義します。AQG324規格は、自動車産業だけでなく、鉄道や航空機におけるパワーエレクトロニクスの信頼性向上に大きく貢献しています。

パワーモジュール|松定プレシジョン

主な試験内容

以下のテストは、自動車業界で使用されるパワーエレクトロニクス モジュールの特性と寿命を検証するために使用されます。テストでは、パワーエレクトロニクスモジュールに使われるIGBTやMOSFET,Diodeなどのパワー半導体部品のパラメータ測定を行います。

モジュール試験 (Module Testing)

  • QC-01: 寄生インダクタンス測定
  • QC-02: 熱抵抗測定
  • QC-03: 短絡耐性試験
  • QC-04: 絶縁試験
  • QC-05: 機械的特性測定

環境試験 (Environmental Testing)

  • QE-01: 熱衝撃試験
  • QE-02: 接触性試験
  • QE-03: 振動試験
  • QE-04: 機械的衝撃試験

ここでは、寿命試験(lifetime Testing)の内容について解説します。
寿命試験は、パワーモジュールの信頼性を検証するために行われるもので、主に熱的・電気的ストレスを加えて、モジュールの経年劣化や故障メカニズムを評価します。それぞれの試験内容について説明します。

QL-01: パワーサイクル試験(短時間)(Power Cycling - PCsec)

目的:短時間の負荷サイクルによる熱疲労を評価し、ボンディングワイヤや半導体接合部の劣化を調査します。

試験方法:半導体素子の通電・遮断を繰り返し、急激な温度変化を発生させる。
温度変化の大きい「チップ近傍のインターコネクション部分」に焦点を当てる。

評価:熱疲労によるボンディングワイヤの断線やチップ-基板間の剥離を観察。

QL-02: パワーサイクル試験(長時間)(Power Cycling - PCmin)

目的:長時間の通電・遮断サイクルを通じて、モジュール全体の熱膨張・収縮による劣化(特にチップ-基板間のハンダやシンターレイヤーの疲労)を調査します。

試験方法:短時間パワーサイクル試験と異なり、加熱時間を長く設定。 モジュール全体の温度変化を緩やかにし、「チップ-基板間の接合部」など遠隔部の劣化に注目。

評価:ハンダ層のクラック発生や、基板剥離の有無を確認。

QL-03: 高温保存試験(HTS: High-Temperature Storage)

目的:高温環境下での長期間保存による材料劣化を評価。

試験方法:モジュールを高温環境(例: 125°C)で一定期間(例: 1000時間)保存。
電気的ストレスは加えず、純粋に温度による影響を評価。

評価:絶縁劣化、封止材の変質、内部接続部の酸化や脆化の有無を確認。

QL-04: 低温保存試験(LTS: Low-Temperature Storage)

目的:極低温環境下での材料特性の変化や脆性破壊のリスクを評価。

試験方法:モジュールを低温環境(例: -40°C)で一定期間(例: 1000時間)保存。
高温保存試験と同様に電気的ストレスは加えず、材料の低温耐性を調査。

評価:基板や樹脂部品のクラック発生、絶縁性能の劣化を確認。

QL-05: 高温逆バイアス試験(HTRB: High-Temperature Reverse Bias)

目的:高温状態で逆バイアス(定格の80-100%の電圧)を印加し、リーク電流の増加や絶縁劣化を評価。

試験方法:高温(例: 150°C)環境下で、IGBTやMOSFETに逆方向の高電圧を印加し、長時間(例: 1000時間)維持。

評価:リーク電流の増加、絶縁破壊、ゲート酸化膜の劣化を確認。

QL-06: 高温ゲートバイアス試験(HTGB: High-Temperature Gate Bias)

目的:高温環境下でゲート電圧を印加し、酸化膜の劣化やリーク電流の増加を調査。

試験方法:高温(例: 150°C)環境で、ゲート-エミッタ間またはゲート-ソース間に定格電圧を印加。
一定時間(例: 1000時間)経過後に特性変化を評価。

評価:ゲート酸化膜の劣化、ゲートリーク電流の増加の有無を確認。

QL-07: 高湿度・高温逆バイアス試験(HTRB: High-Humidity, High-Temperature Reverse Bias)

目的:高温・高湿度環境下で逆バイアス電圧を印加し、湿度による絶縁劣化を評価。

試験方法:高温(85°C)・高湿度(85%RH)の環境で、逆バイアスを印加し、長時間(例: 1000時間)保持。 湿度によるリーク電流の増加や絶縁材料の劣化を調査。

評価:絶縁耐性の低下、リーク電流の増加、絶縁破壊の有無を確認。

まとめ

寿命試験は、熱、電気、湿度などのさまざまな環境要因に対するパワーモジュールの耐久性を評価する重要なプロセスです。
熱サイクル試験(PCsec, PCmin) → 熱疲労による接合部の劣化を評価。
高温・低温保存試験(HTS, LTS) → 長期間の温度変化による材料劣化を調査。
高温バイアス試験(HTRB, HTGB, HTRB) → 電圧ストレス下での絶縁・リーク電流の変化を確認。
この試験によって、車載用パワーモジュールの長期的な信頼性を確保することが可能になります。

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