公称値とは、製品や電子部品の性能を表すために、設計上定められた呼び名としての値です。この値は、製品を識別したり、性能の基準(リファレンス)としたりするためのもので、理想的な条件下における「目標値」と考えることができます。
しかし、実際の測定値は、製造時の個体差(許容差)や、使用する環境(温度など)、その他の要因により、公称値と完全に一致することはほとんどありません。
具体例:
- •抵抗器:
- 公称値が100Ωの抵抗器でも、実際の抵抗値を測定すると100.2Ωや99.7Ωといった値になります。公称値からどの程度のズレが許容されるかは、許容差(例: ±1%)によって規定されています。
- •プログラマブル電源:
- ユーザーが出力電圧を12.000Vに設定したとします。この設定値が公称値です。電源は正確にこの電圧を出力しようとしますが、高精度のデジタルマルチメータで測定すると、電源自体の精度や接続される負荷の影響により、実際の出力は12.002Vのように、設定値とわずかに異なる値となります。
- •自動車のバッテリー:
- 自動車のバッテリーの公称電圧は12Vですが、エンジン作動中の実際の電圧は13.8V程度になります。
このように「公称値」という言葉は、設計上の目標値(設定値)と、実際の測定値とを区別するために用いられ、設計、試験、仕様策定における共通の基準となります。