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用語集

電源や電子機器の仕様書に記載されている「絶縁耐圧」や「耐電圧」。これは、製品の安全性と信頼性を保証するために極めて重要なスペックです。感電や火災といったリスクを防ぎ、ユーザーが安心して製品を使用できることを示す指標となります。

絶縁耐圧の基本的な意味

簡単に言うと、絶縁耐圧は「製品の絶縁部分が、破壊されずに耐えられる電圧の上限値」のことです。
電気は本来、流れるべきではない場所(例えば、機器のケースや、入力回路と出力回路の間など)には流れないように「絶縁」されています。しかし、非常に高い電圧が加わると、この絶縁が限界に達して電気が流れてしまう「絶縁破壊 (Electrical Breakdown)」という現象が起こります。
絶縁耐圧は、この絶縁破壊が起こらないことを保証する電圧の値を指します。

仕様書での表記例

カタログや仕様書では、以下のように記載されます。

入力-出力間:AC 1500V / 1分間
これは、入力側と出力側の間に交流1500Vの電圧を1分間加えても、絶縁が破壊されず安全であることを示します。
入力-シャーシ(ケース)間:AC 1500V / 1分間
入力側と、人が触れる可能性のある金属ケースとの間の絶縁性能を示します。

また、関連するスペックとして「対地電圧」もあります。これは、出力端子を直列に接続して出力電圧を上げた場合など、地面(アース)を基準として安全に使用できる電圧の最大値を示します。

【違いを解説】混同しやすい用語

絶縁性能に関する試験や用語には、似て非なるものがいくつかあります。特に重要な違いを解説します。

「耐電圧試験」と「絶縁抵抗試験」の違い

この2つの試験は、どちらも製品の安全性を保証するために不可欠ですが、目的が異なります。

項目 絶縁抵抗試験 (Insulation Resistance Test) 耐電圧試験 (Withstand Voltage Test)
目的 絶縁性能が十分か(電気が漏れにくいか)を確認する。 規定の異常電圧がかかっても絶縁破壊しないかを検証する。
イメージ 健康診断 ストレステスト
印加電圧 比較的低いDC電圧(例: DC 500V, 1000V) 非常に高いACまたはDC電圧(例: AC 1500V)
測定対象 抵抗値(単位: MΩ)。値が大きいほど高性能。 規定時間内に絶縁破壊や異常放電が起きないこと。

つまり、絶縁抵抗試験は「絶縁の質」をチェックし、耐電圧試験は「絶縁の強度」を証明する試験と言えます。

英語表記のニュアンスの違い

海外メーカーの仕様書を読む際には、英語表記の違いを理解しておくことが重要です。

日本語での項目名 英語での項目名 概要
絶縁耐圧/耐電圧 Withstand Voltage 製品として、規定の条件下で絶縁破壊せずに耐えられる電圧。安全規格などで保証される性能値です。
絶縁耐力 Dielectric Strength 絶縁材料そのものが持つ物理的な特性。単位厚さあたりに耐えられる電圧 (例: kV/mm) で示されます。
絶縁抵抗 Insulation Resistance 絶縁体に電圧をかけたときに流れる微小な漏れ電流から算出される抵抗値。絶縁性能の良否を示します。
絶縁(分離・隔離) Isolation 回路間を電気的に分離すること。安全確保やノイズ対策のために行われます。

【補足】「Isolation Voltage」と「Withstand Voltage」の技術的な違い

海外の技術資料やデータシートでは、「Isolation Voltage」と「Withstand Voltage」という用語が使われますが、これらは似ているようで厳密には異なる意味合いを持つ場合があります。特に海外の安全規格やネイティブの技術者の間では、以下のように区別されています。

Withstand Voltage(耐電圧)

一時的な電圧ストレスに対する強度を示す指標です。

  • 意味: 絶縁破壊を起こすことなく、規定時間(通常1分間)だけ印加できる電圧の上限値。
  • 用途: 製品の製造検査や安全規格の認証試験(耐圧試験)で、安全マージンを確認するために用いられます。AC実効値(RMS)で示されることが一般的です。
  • イメージ: 短時間のストレステストで製品の絶縁強度を保証する値。

Isolation Voltage(絶縁電圧)

長期的・連続的な使用における絶縁性能を示す指標です。

  • 意味: 機器の正常動作において、連続的に印加できる最大の電圧。長期間にわたって絶縁性能が維持されることが求められます。
  • 用途:「Working Voltage(最大使用電圧)」とも関連が深く、製品の定格運転時における絶縁設計の基準となります。
  • イメージ: 日常的な使用で安全を確保するための値。

ただし、文脈によっては「Isolation Voltage」が「Withstand Voltage」を含む、より広い意味(アイソレーションに求められる耐圧全般)で使われることもあります。

まとめ:2つの電圧の違い

用語 意味 適用シーン・目的
Withstand Voltage 短時間(例:1分間)だけ耐えられる電圧 製造検査、安全認証試験。一時的なストレスに対する安全マージンの確認。
Isolation Voltage 連続的に印加しても問題ない最大電圧 定格運転時の絶縁設計。長期的な安全性と信頼性の確保。

簡単に言えば、Withstand Voltageは「万一の異常電圧に対する瞬間的な耐久力」を証明する試験値であり、Isolation Voltage (Working Voltage)は「通常使用における継続的な安全性」を示す定格値、という違いがあります。この区別を理解することで、海外メーカーの製品仕様をより正確に把握できます。

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