電源装置における保護機能(Protective Functions)とは、DC電源(直流電源)やAC電源(交流電源)、高電圧電源といった製品自身、そして接続された負荷(電子部品、回路、機器など)を、予期せぬ異常状態から保護するための極めて重要な機能群です。
例えば、出力の短絡(ショート)や過負荷、内部温度の異常上昇などが発生した際に、これらの保護機能が瞬時に動作します。これにより、電源や負荷の劣化・故障、さらには発火といった深刻な事態を未然に防ぎ、システム全体の安全性と信頼性を確保します。松定プレシジョンの電源装置は、長年の経験で培われた高度で多彩な保護機能を標準で搭載し、お客様の貴重な資産と研究開発環境を堅牢に守ります。 ※これらの保護機能は装置や回路を保護するものであり、感電など人体を保護することを目的としたものではありません。
主な保護機能の種類
保護機能は、主に「出力」「入力・内部」「その他」に関するものに分類できます。
出力に関する保護機能
出力側、すなわち負荷に接続される側で発生する異常から電源と負荷を保護します。
- •過電圧保護 (OVP: Overvoltage Protection)
- 出力電圧が設定値以上に上昇するのを防ぎます。これがなければ、接続された精密な電子部品が定格を超えた電圧によって瞬時に破壊される可能性があります。
- •過電流保護 (OCP: Overcurrent Protection)
- 出力電流が設定値を超えた場合に、電流を制限または出力を遮断します。負荷の故障や誤接続による過大な電流から、電源と負荷の両方を守ります。
- •過負荷保護 (OLP: Overload Protection)
- 電力(電圧 × 電流)が定格を超えた状態を検出し、出力を制限または遮断します。モーターのように起動時に大きな電力を必要とする負荷などを保護する際に有効です。
- •短絡保護 (Short Circuit Protection)
- 出力のプラスとマイナスがショート(短絡)した際に、過大な電流が流れ続けるのを防ぎます。電源内部の部品焼損を防ぐための基本的な保護機能です。
- •アーク放電保護 (Arc Protection)
- 特に高電圧電源で重要となる機能です。出力先でアーク放電を検知した際、瞬時に出力を遮断して大規模な損傷や火災のリスクを低減します。
- •逆接続保護 (Reverse Polarity Protection)
- バッテリーなど、電圧を発生する負荷を接続する際に、プラスとマイナスを逆に接続してしまった場合に、逆電流による電源や負荷の回路破壊を防ぎます。
入力・内部に関する保護機能
電源装置自身を、入力電源の異常や内部の環境変化から保護します。
- •AC入力異常保護 (AC Fault Protection)
- 工場の電源事情などによる入力AC電圧の瞬断や低下といった異常を検知し、出力を停止して不安定な動作を防ぎます。
- •低電圧保護 (UVP/UVLO: Undervoltage Lockout)
- 入力電圧が、電源が正常に動作するために必要な最低電圧を下回った場合に、出力を停止させます。中途半端な電圧での動作による誤動作や故障を防ぎます。
- •過温度保護 (OTP: Over Temperature Protection)
- 電源内部の半導体や部品の温度が許容値を超えた場合に、出力を遮断します。冷却ファンの故障や周囲温度の異常な上昇による、熱暴走や部品の劣化・故障を防ぎます。
- •突入電流防止 (Inrush Current Limiting)
- 電源投入時にACラインから流れ込む大きな初期電流(突入電流)を抑制します。これにより、入力ラインのブレーカーがトリップしたり、電源内部の整流回路が劣化したりするのを防ぎます。
負荷への影響を考慮した機能
- •ソフトスタート (Soft Start)
- 電源投入時に、出力電圧をゼロから設定値まで緩やかに立ち上げる機能です。突入電流に弱い負荷や、急激な電圧印加を避けたいアプリケーションにおいて、負荷への電気的ストレスを大幅に軽減します。
これらの保護機能が適切に設計・搭載されていることが、信頼性の高い電源の証です。お客様のアプリケーションに最適な保護機能を備えた電源を選定することが、システムの安定稼働の鍵となります。
- 関連ワード
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- 過電圧保護 (OVP)
- 過電流保護(OCP)
- 過負荷保護
- 出力短絡保護
- アーク放電保護
- 電圧垂下(過電流時電圧垂下保護)